キーワード:摩擦攪拌接合,異種金属,付加製造,アンカー効果 1. 研究の目的と背景 近年、ものづくり産業においては、高機能で多様性に富んだ新材料が求められており、現有素材を適材適所で組み合わせる、いわゆる「マルチマテリアル化」に高い関心が集まっている。特に、軽量化を目的とした鉄鋼とアルミニウムは、最も注目されている組み合わせの一つであるが、一般的な溶融溶接では、接合時の熱により接合界面に金属間化合物(以下、IMC)が大量に生成し、接合強度が著しく低下することが問題となっている1)。最近、接合温度の低い摩擦攪拌接合(以下、FSW)の適用により、IMCの生成を抑制し、高品質な異種金属接合材を作製できることが見出された2)。異種金属FSWでは、図1に示すように、硬質ワーク(鉄鋼)をツールで削ることで清浄面を露出させ、その面に対して塑性流動した軟質材料(アルミニウム)を押し付けることによって、材質的に接合する。しかしながら、接合時におけるツールとワークの過剰な接触は、過度の発熱とそれによる多量のIMCの生成をもたらすことから、限られた接合条件でしか高品質な異種金属FSW材を作製できない3,4)。そのため、適正接合条件範囲の広い異種金属FSW技術の開発が強く求められている。そこで、本研究では、アンカーを利用した接合法に着目した。これは、あらかじめ切削等で加工されたワーク表面の凹凸に、FSWにより塑性流動した材料を流入させ、機械的に接合する技術である。しかしながら、これまで報告されている切削加工では、付与できる凹凸形状に制限があり、凹凸形状と接合強度との関係は明らかになっていない。そこで、本研究では、付加製造法を用いることで、鉄鋼表面に任意の凹凸形状を形成させ、接合強度を最大化できる凹凸形状を明らかにするとともに、接合時の課題を抽出し、その改善法について検討した。本報告では、その検討結果を述べる。 図1 異種属摩擦攪拌接合模式図 大阪産業技術研究所 金属材料研究部 (2019年度 一般研究開発助成 AF-2019013-B2) 主任研究員 田中 努 2. 実験方法 鉄鋼表面への凹凸形状の造形には、Ybファイバーレーザを搭載したレーザ積層造形(L-PBF)装置(EOS製 EOSINT M280)を使用した。平均粒径約20 mのマルエージング鋼ガスアトマイズ粉末を用いて、図2(a)に示す形状の突起を、厚さ20mmのS50Cプレート上に造形した。ここで、突起高さは1 mmとし、Pはxおよびy方向における近接する突起の中央間距離、Gは近接する突起間の最小間隙、d1、d2およびは逆円錐台突起の根元部直径、先端部直径、プレート面からの傾斜角度である。造形後、造形面を9 mm間隔で短冊状に切断し、図2(b)に示す側面に突起を有した、厚さ9 mm、幅20 mmの板材を準備した。接合に用いるアルミニウム材は、厚さ10 mmのA5052である。FSWには、プローブ直径8 mm、プローブ長さ8 mm、ショルダ直径24 mmの接合ツールを使用した。接合ツールは、プローブ外周を突起先端から約0.2 mm離した位置に挿入し、回転速度1800 rpm、接合速度20 mm/minで接合を行った。FSWの塑性流動により突起が破損しないd1を調査したところ、d1が1.1 mm以上であれば、FSWの塑性流動により突起が破損しなかったことから、d1を1.1 mmで固定した。接合強度を最大にする凹凸形状の数値解析には、Simufact Formingを用いた。解析モデルは図3に示す通りである。要素はテトラ要素(tetrahedral247)、 図2 (a)造形の基準形状と(b)接合の模式図 図3 数値解析モデル − 103 −3次元表面形状制御を利用した革新的マルチマテリアル化技術の構築
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