天田財団_助成研究成果報告書2023_2
104/472

4.まとめ 図6■イオン溶出試験後の各試料表面におけるXPS分析 1) 謝■辞■参考文献 加え、結晶粒内にも転位などの格子欠陥を多量に含むことから、これらを介した合金元素の拡散により試料表面の不動態皮膜の形成を促進したと考えられる。以上の結果は、本合金において多パス熱間圧延は機械的特性だけでなく、耐食性の改善も可能であることを示唆しており、生体材料としての特性を向上させる有効な手段であることが明らかとなった。 結果 本研究では、多パス熱間圧延により作製した生体用Co−Cr−Mo合金の加工組織が耐食性に及ぼす影響について調査した。その結果、本合金において多パス熱間圧延は機械的特性だけでなく、耐食性の改善も可能であることが示唆され、生体材料としての材料特性の向上に有効な手段であることが明らかとなった。以下に得られた知見を示す。 陥を多量に含むことから、これらを介した合金元素の拡散により試料表面の不動態皮膜形成を促進したと考えられた。 本研究は公益財団法人天田財団 2019年度一般研究開発助成の支援の下行われました。助成を賜わりましたことを厚く御礼申し上げます。 − 102 −annealed材とas-rolled材ともに粒内に40~50%焼鈍双晶を有する等軸状組織だった。また、平均結晶粒径は、annealed材が48.8 ± 1.5 μm、as-rolled材では4.2 ± 0.1 μmだった。 2) annealed材の転位密度は極めて低い値であったのに対し、as-rolled材の転位密度は1.97 × 1014 m−2となり、多パス熱間圧延により転位密度が著しく増加することが明らかとなった。 3) 室温引張試験の結果、as-rolled材はASTM F1537規格を上回る0.2%PS(1000 MPa)を示し、UTSも含め著しく高強度化した。また、as-rolled材のELも約40%であり、多パス熱間圧延により強度−延性バランスに優れた機械的特性を得られた。疲労特性もas-rolled材の方が優れていた。 4) イオン溶出試験において試料間の大きな差異は認められなかったが、動電位分極試験から得られたアノード分極曲線にてannealed材においてのみ活性態−不動態遷移が観察され、試料間に挙動の違いが見られた。 5) アノード分極曲線の活性態−不動態遷移挙動に違いが見られた理由として、as-rolled材は粒界密度が高いことに加え、結晶粒内にも転位などの格子欠1) Mori et al., Mater. Sci. Eng. C, 55 (2015) 145–154. 2) Mori et al., Acta Biomater., 28 (2015) 215−224.) 3) 砂田聡ら, 日本金属学会誌, 55 (1991) 660−666. 4) C.S. Obayi et al.: Acta Biomater. 17 (2015), 68. 5) M. Hasegawa et al.: Corrosion 40 (1984), 371. 6) W. Ye et al.: Electrochim. Acta 51 (2006), 4426. 7) L. Peguet et al.: Corro. Sci. 49 (2007), 1933.

元のページ  ../index.html#104

このブックを見る