天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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図5■0.9%NaCl水溶液(37 ℃)において得られたアノー図6にイオン溶出試験後の試料表面状態についてXPSを用いて調べた結果を示す。両試料とも検出された元素 一方、イオン溶出試験では、両試料とも構成元素のうちCoが最も溶出量が多く、次にCrの溶出も検出されたが、他の元素は検出限界以下であった。さらに、CoとCrのイオン溶出量は試料間で有意差は認められず、熱間加工による耐食性への影響は認められなかった。 図4に各試料の疲労試験結果を示す。いずれの試料も応力の増加とともに破断回数が減少したが、同一応力条件における破断回数はas-rolled材の方がannealed材よりも高く、多パス熱間圧延により疲労特性が向上することが明らかとなった。 図4■疲労試験により得られた各試料のS-N曲線 以上の結果より、本研究で目的としていた高強度なCo−Cr−Mo合金を得られたことが明らかとなったことからこれらの試料を用いて耐食性評価を行った。 ■・■■耐食性■図5に各試料のアノード分極曲線を示す。試料間で腐食電位および腐食電流密度に大きな違いは観察されなかったが、annealed材では活性態−不動態遷移が観察された。このときの不動態化臨界電流密度は2 μA cm−2程度であった。それに対し、as-rolled材では明確な遷移挙動は示さなかった。組織観察結果では腐食挙動に大きな影響を与えるとされる相分布や集合組織4)に両試料間に大きな違いはなかったことから、このような腐食挙動の違い多パス熱間圧延による結晶粒微細化と結晶粒内における転移の蓄積に起因すると考えられる。 ド分極曲線 に明確な違いは見られなかった。また、両試料ともイオン溶出試験後の表層にCrが濃化していることから、イオン溶出試験により不動体被膜のCr2O3が形成したことが明らかとなった。 本合金と同じfcc構造を有するオーステナイト系ステンレス鋼(AISI304)では結晶粒径の微細化により耐食性が変化することが報告されているが5),6)、本研究では腐食電位や腐食電流密度およびイオン溶出量にも試料間に大きな違いは見られなかった。また、オーステナイト系ステンレス鋼では転位密度の増加により孔食が発生するとの報告があるが7)、本合金では確認されなかった。一方、図5に示したアノード分極曲線では、組織の違いにより活性態−不動態遷移挙動に違いが見られた。as-rolled材は微細な結晶粒組織を有していて、粒界密度が高いことに− 101 −■・ ■機械的特性 図3に、室温引張試験により得られたannealed材およびas-rolled材の0.2%耐力(0.2%PS)、最大引張強度(UTS)、破断伸び(EL)を示す。多パス熱間圧延により1000 MPaを超える0.2%PSを示し、ASTM F1537の規格である700 MPaを大きく上回った。この値はannealed材の約2倍であり、UTSとともに著しく高強度化した。また、as-rolled材では強度とトレードオフの関係にあるELも約40%を示し、annealed材よりもわずかに低下したものの、強度−延性バランスに優れた機械的特性を示した。 図■■各試料の室温引張特性■

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