天田財団_助成研究成果報告書2023_2
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− 98 −1) Y. Kimura, T. Inoue, F. Yin and K. Tsuzaki: Science, 320 (2008), 1057. 2) T. Inoue, R. Ueji: Mater. Sci. Eng. A 786 (2020) 139415. 3) T. Inoue, R. Ueji: Finite elements Analysis and Design 183-184 (2021) 103491. 4) T. Inoue, H. Qiu, R. Ueji, Y. Kimura: Materials 14 (2021) 1634. 5) 三村宏・町田進:基礎材料強度学, (2005), 122, 培風館 謝■辞 参考文献 強靭化が発現できるとは言えない.そこで,WBRのような壊れにくい組織構造によって,vEを向上させるアイデアが必要となる.また,温間平圧延プロセスによってαの短軸粒径が0.6, 1.0, 1.2μmまで超微細繊維状化されたUnR, BiRの強靭性の低下は,集合組織に付随したセパレーション5)によるものである.すなわち,靭性向上には集合組織を理解し,精緻なプロセスで制御することが必要である.図12からわかるように,既存鋼のデータはσys-vE関係上の 15×104 MPa J以下に位置付けられる.それ以上にプロットされているのは,シャルピー試験で層状破壊が起きた温度以上でのWBR(N)とWBR(T)だけである. 以上から,従来鋼の限界を打破する強靱化を考える場合,微視組織の異方性を活かした設計が考えられる.結晶粒の単なる微細化だけでは,複数の特性を同時に向上させることは難しく,結晶粒の形態(粒径と粒形)と結晶方位を同時に制御し,脆性破壊となる弱い面(へき開面,粒界,硬質第2相とマトリックスの界面,硬質第2相)の空間分布を設計することが強靱化の方向の一つである. 4. 結び 材料の超強靭化の実現に向けて,2軸温間圧延プロセスを提案し,短軸粒径1.2 μmの微細繊維状結晶粒組織を有する800MPa級の低炭素鋼を創成した.開発材の断面中央付近では,従来の圧延集合組織には見られないCube方位が発達した.Cube方位は,表面に近づくにつれ消失し,αファイバーが主方位となった. これまでの組織設計は,結晶粒の細粒化,P, Sなどの粒界脆化元素の低減,Bなどの粒界強化元素やNbなどのマトリックス強化元素の活用などで脆性破壊応力を増加 させ,延性的な破壊を主体とさせることで材料の強靱化が図られてきた.そして,過酷な使用環境によって材料の靱性が確保できない場合は構造設計でカバーしてきた.一方,本設計思想は,塑性加工プロセスによる結晶粒微細化技術によって,微視組織の異方性を活かし,降伏応力に異方性を持たせ,特定の方向の脆性破壊応力を極端に大きくすることで,素材そのものの強靱化を図るものである.たとえ材料内部に微視き裂が発生しても,材料自体は直ちに壊れず,むしろその後の多数の微細き裂の発生とき裂の分岐によって,主き裂端近傍の応力を緩和する.すなわち,力を分散させた応力遮蔽効果によって,破壊駆動力を低下させ,材料全体で力を受けとめる組織設計である.このような組織設計によって,材料の破壊の仕方を制御することで,材料の強靭バランスを飛躍的に大きくできることを示した.このような組織を効果的・効率的に創成するプロセスとして,2軸温間圧延を提案し,その有効性を実証した. ■■本研究の実施にあたり,公益財団法人天田財団より研究助成を頂きました.ここに感謝致します. ■

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