助成研究成果報告書Vol.35
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4.結び 3・4 溝ロール圧延による熱間加工 熱処理材に900℃で圧縮変形を付与すると,動的再結晶によって均一微細な結晶粒が得られることが実証できた.そこで,圧縮変形の代替として熱間溝ロール圧延を実施した.σ相とbcc相が分散したAl7合金の熱処理材に関して予熱温度900℃で溝ロール圧延を行なったところ,圧延後の結晶粒径は約2μmまで微細化された(図10).目標としたサブミクロン以下への微細化は熱間溝ロール圧延で達成できていないものの,圧延条件の最適化でさらなる結晶粒の微細化,ひいては高速超塑性の発現が期待できる. 本研究では,高エントロピー合金に加工熱処理を施すことによって結晶粒微細化を図り,高速超塑性が発現するようなハードメタル部材の創製を目指した.Alを添加したCantor合金で,冷間加工とその後の熱処理によって,比較的短時間で第二相を密に分散させておき,引き続いて熱間加工を行えば,動的再結晶によって均一微細な組織が得られることを見出した. 図7 冷間溝ロール圧延材(Al8合金)を熱処理して得られる組織.(a)phaseマップ,(b)fcc相のIPFマップ,(c)bcc相のIPFマップ,(d)σ相のIPFマップ.3)(copyright granted,License Number:5300660540083) 動的再結晶におよぼす第二相の影響を,均質化処理材を高温圧縮した場合と比較することで検討した.図9にAl8合金を900℃で圧縮変形した場合に得られた組織を示す.均質化処理材の熱間加工後の組織には,せん断帯に加えて,粗大なままのfcc結晶粒内において結晶方位が緩やかに変化する領域が観察されていて,動的再結晶が顕著に起こる様子は見られない.真応力-真ひずみ曲線は変形中期において定常応力を示し,動的再結晶で観察されるような加工軟化は見られなかった.同じ合金成分でも第二相の有無によって動的再結晶挙動は大きく異なる. 第二相の分散がないCantor合金で観察されている動的再結晶では,サブミクロンの結晶粒の形成が報告されているが再結晶率は10%以下である.一方,再結晶率を高くすると動的再結晶粒は粗大になってしまう.このように,均一微細な結晶粒を動的再結晶により得ることは困難だった4).本研究によって,比較的粗大な第二相を密に分散させておけば,その後の熱間加工中に起こる動的再結晶によってサブミクロンサイズの均一な結晶粒が得られることがわかった. − 69 −

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