3.実験成果2・2合金の加工熱処理本研究では,Al8とAl9合金に対して図4に示す加工熱処理を考案した3,4).室温での溝ロール圧延に供する円柱試料(直径42mm)は,均質化処理材から旋盤加工で採取した.8パスの圧延で導入された塑性ひずみ量はおよそ1.2から1.5と有限要素解析により見積もられた(図5).冷間溝ロール圧延の後,800℃にて8時間の熱処理を施した.熱処理材に対する熱間加工は,まず熱間加工再現試験装置サーメックマスターZを用いて模擬した4).900℃の高温で圧縮変形を付与した.初期ひずみ速度は1s-1とした.試験片を公称ひずみが約-56%となるまで変形し,変形終了後はガス噴射にて冷却した.この圧縮試験の結果に基づいて,熱間加工として溝ロール圧延機を用いた塑性加工も実施した.図4付与した加工熱処理図5Al8合金の冷間溝ロール圧延で導入される塑性ひずみの解析結果.(a)溝ロール圧延前,(b)4パス後,(c)8パス後.3)(copyright granted,License Number:5300660540083)3・1冷間溝ロール圧延で得られる組織溝ロール圧延まま材(Al8合金)のX線回折図形を図6(下側の赤線)に示す.構成相は基本的にはfcc相のままであった.TEM観察の結果,高密度の転位や面欠陥(双晶を含む)が冷間溝ロール圧延で導入されていることがわかった5).3・2冷間溝ロール圧延後の熱処理で得られる組織熱処理材のX線回折図形を図6(上側の青線)に示す.熱処理にともなってσ相(正方晶)とB2相(規則化したbcc相)が析出していた5).SEM-EDSによる分析の結果,σ相はCrが顕著に濃化し,bcc相はNiとAlが顕著に濃化していた.SEM-EBSDにより組織観察した結果,これら第二相の分散には2種類の形態があり,一つはfcc相中に凝集せずに微細に分散した形態で,もう一方は,fcc相中に形成された「σ相とbcc相から構成される凝集体」であった(図7).凝集体中のσ相とbcc相の大きさはそれぞれ約1μm,0.7μmであった.初期の凝集体は,わずか30分の短時間で形成されており,冷間加工が析出を加速させたと考えられる.Cantor合金の均質化処理材でσ相が析出するには長い期間(例えば1000時間6))が必要であることを考えると,冷間溝ロール圧延材において析出が極めて短時間で起こったことが明白である.このような組織形成は,導入されるひずみ量が重要であることをhat-shape型試験片を用いても確認している7).Al9合金の均質化処理材からhat-shape型試験片を採取し,split Hopkinson pressure barによる高速圧縮荷重の作用によって高速せん断変形を加えた.その後800℃にて8時間の熱処理を施したところ,σ相とbcc相の析出がせん断帯付近の領域でのみ確認できた.一方で,hat-shape型試験片でひずみの導入がほとんどない領域ではこれらの析出はなかった.3・3熱間加工で得られる組織Al8 合金の熱処理材に対して,熱間加工再現試験装置を用いて高温圧縮変形を付与した後の組織は,fcc相の平均結晶粒サイズ(直径)が0.8μmにまで均一に微細化されていた(図8).この圧縮変形における真応力-真ひずみ曲線では広いひずみ域で緩やかな加工軟化を示した.これらの結果から,均一微細な結晶粒は動的再結晶によってもたらされたと考えられる.Al量を多くしたAl9合金の熱処理材でも類似の組織変化が観察できた.第二相(σ相およびbcc相)の分散が,動的再結晶による結晶粒の均一微細化に対して有効に働いていると考えられる.図6Al8合金の冷間溝ロール圧延まま材(赤線)と熱処理材(青線)のX線回折図形.5)(copyright granted,License Number:5300660684155)− 68 −
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