助成研究成果報告書Vol.35
69/462

1.研究の目的と背景2.実験方法キーワード:高エントロピー合金,加工熱処理,組織制御高エントロピー合金は高強度と高靱性の両立が可能な構造材料として期待されている.通常,ほぼ等モル比の5成分以上の元素から構成される合金であり,固体では単相の固溶体を形成しやすい.5成分が等量の高エントロピー合金Cr20Mn20Fe20Co20Ni20(Cantor合金;数字はat.%)1)がよく知られており,この鋳造材はfcc単相の固溶体を形成する.高エントロピー合金の組織や特性は,これまで鋳造ままで評価されることが多かった2).しかしながら,熱処理や加工熱処理にともなう相変態や組織変化を理解し,そして組織制御に適用することは,特性向上にとって有益であると考えられる.本研究では,加工熱処理を利用した組織制御によって,結晶粒をサブミクロン以下にまで微細化し,室温近傍での高強度のみならず,高温で高速超塑性が発現するような高エントロピー合金を創製することを目指した.工業的に活用することを念頭に,本研究では加工方法として,長尺で均質な素形材が得られる溝ロール圧延を採用した.2・1合金の作製検討する合金系として,Cantor合金にxat.%のAlを添加した(CrMnFeCoNi)100-xAlx(以下では簡単にAlxと表記する)を選択した.高周波溶解によって比較的大型の円柱形状の鋳造材(Al0,Al7,Al8,Al9)を作製した.鋳造材の外観を図1に示す.図1作製した鋳造材の外観大阪産業技術研究所物質・材料研究部(2018年度重点研究開発助成課題研究AF-2018001-A2)研究室長渡辺博行鋳造材に対して1200℃にて48時間の均質化処理を施した.均質化処理材の結晶粒は粗大で(図2),すべての構成元素は均一に分布している(図3).均質化処理材は,Al0,Al7,Al8合金ではfcc単相であるが,Al9合金では微量(2%程度)のbcc相がfcc相の粒内および粒界に形成されていた.図2均質化処理材(Al8合金)のIPFマップ図3均質化処理材(Al8合金)の元素マッピング(EDS)− 67 −ハードメタル部材の創製に向けた高エントロピー合金の高速超塑性化

元のページ  ../index.html#69

このブックを見る