図6CVD-SiCセラミックスに形成された照射痕の輝度像と深さプロファイル。照射痕画像のスケールは各画図5CVD-SiCセラミックスに形成された照射痕中央の輝度が高い部分(5.3 J/cm2、200回照射)長の0.75倍であった。SiC結晶や金属にフェムト秒レーザを照射すると、レーザの波長よりも長い周期を持つLIPSSや、波長の半分以下の周期を持つfine-LIPSSが生じることが報告されているが3-5)、本実験で用いたレーザのパルス幅は360psとフェムト秒レーザに比べて3-4桁もパルス幅が長いにも関わらず同様のLIPSSが形成されることが明らかになった。図5にCVD-SiCセラミックスを5.3 J/cm2で200回照射して形成された照射痕中央部の輝度が高い部分を示す。周辺部と同様のレーザ偏光に垂直な方向のLIPSSに加え、レーザ偏光に平行な方向にも同程度の周期間隔のLIPSSが形成されており、それぞれが重なり合うことで、四角い形状の周期的構造が形成されている様子が見て取れる。サブナノ秒レーザ照射においてこれらのLIPSSがどのようにSiCセラミックスに形成されるか、メカニズムも含めて今後議論を深めていきたい。それぞれのフルーエンスにおけるCVD-SiCセラミックスの照射痕中心を通る部分の深さラインプロファイルを図6に示す。それぞれのラインプロファイル縦軸のスケールは各画像で異なるため、ラインプロファイルに関してはその形状にのみ着目されたい。図6(a)のように全面に輝度の高い照射痕が形成されている場合は、照射痕中心を通るラインプロファイルは全体的に下に凸でのお椀型をしており、ビームプロファイルを反映するような照射痕が形成されている。しかし、フルーエンスが下がっていくと、図6(b)のように照射痕の周辺部にLIPSSが見え始め、輝度が高い部分の周辺部よりもLIPSSができている部分のほうが深く掘れていることがラインプロファイルから見て取れる。さらにフルーエンスが下がると、図6(c)のように周辺部のLIPSSの面積が大きくなり、輝度が高い部分は中央にのみ存在するようになる。ラインプロファイルはダブリュー型となり、輝度の高い部分はLIPSSが形成される領域よりもアブレーション率が低いことが見て取れる。フルーエンスがさらに下がると輝度の高い部分が形成されなくなり、図6(d)のように全面がLIPSS構造に覆われた照射痕が形成されて、ラインプロファイルもフラットになる。このことから、図2において、3-15 J/cm2にかけてアブレーション率が低下した後に、3J/cm2以下でアブレーション率が増加に転じた理由は、輝度が高い部分に比べてLIPSSが形成された部分のアブレーション率が高く、またフルーエンスの減少によって照射痕中央部に輝度の高い部分が形成されなくなったためであることが像で共通、深さプロファイルは任意単位(a) 9.2 J/cm2、100回照射(b) 6.5 J/cm2、300回照射(c) 3.2 J/cm2、300回照射(d) 2.2 J/cm2、600回照射明らかになった。また、輝度が高い部分は、レーザの吸収がLIPSS形成部分や素地の部分よりも低いと考えられ、これによりアブレーション率が低下したのではないかと考えられる。SiC結晶にフェムト秒レーザーを照射すると、アモルファス化した領域が形成されることが報告されており6)、SiCセラミックスにおいても高輝度部分の組成や結晶構造を調べることで、高輝度部形成のメカニズムについて今後検討していきたいと考えている。全面にLIPSSが形成されている図6(d)ではラインプロファイルの底が平らになっている。これは図2において1-2 J/cm2でアブレーション率がほぼ一定になっていることと一致している。このフルーエンス領域でSiCセラミックスを加工することで、LIPSSは形成されるが、平らな面を出しながらのレーザ加工が可能であることが明らかになった。一方、フルーエンスが2倍程度異なるこのフルーエンス領域で、なぜアブレーション率が一定になるのかは今後の課題である。− 437 −
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