図1実験配置1.研究の目的と背景キーワード:■■■セラミックス,レーザアブレーション,ナノ周期構造シリコンカーバイド(SiC)セラミックスは高い剛性や耐摩耗性を有しており、温度上昇にともなう機械強度の低下が小さいことから、摺動部品や耐熱部品、ガラスレンズ成型部品など工業的に幅広く用いられている。我々は、SiCセラミックスがガラスに比べて100倍以上高い熱伝導率を有することに着目して、SiCセラミックスを基板とした熱負荷に強い光学素子の開発に関する研究を進めている。これまでに、金ミラーの基板にSiCセラミックスを用いることで、加熱時の表面精度の劣化がガラス基板を用いた場合の半分以下に抑制されることや、ホルダーに工夫をすることで温度上昇を極めて小さくできることなど、SiCセラミックス基板の熱負荷に対する優位性を実験的に明らかにしてきた1)。今後、SiCセラミック基板を加工して構造を付けたり、内部に流路を形成して内側からの冷却を行うことで、さらなる熱負荷耐性の向上が期待される。一方で、SiCセラミックスは硬度が極めて高い難加工材として知られ、機械加工に多くの時間と費用を要することから、レーザによる高効率な加工が期待されている。しかし、SiCに関するレーザ加工はSiC結晶を対象とした報告が主流で、SiCセラミックスについては加工(ダメージ)閾値フルーエンスやアブレーション率(レーザ1照射あたりに掘れる深さ)のレーザフルーエンス依存性などの加工に重要な特性の詳細に関する報告は極めて少ないという現状にある。本研究では、パルスレーザーに対するSiCセラミックスのレーザ加工特性を明らかにすることを目的として、化学気相成長(CVD:Chemical vapor deposition)SiCセラミックスと焼結SiCセラミックスに対してそれぞれレーザを集光照射し、ダメージ閾値フルーエンスとアブレーション率のレーザフルーエンス依存性を求める実験を行った。CVD-SiCセラミックスは焼結SiCセラミックに比べて粒径が小さく、また粒子の中身が詰まっているため、鏡面研磨によってより平滑で欠陥の少ない平面を得ることができる。また、実験に用いたCVD-SiCセラミックスと焼結SiCセラミックスの熱特性を比べると、比熱、熱膨張量子科学技術研究開発機構関西光科学研究所( ■■■年度奨励研究助成(若手研究者枠)■■■ ■■■ ■■■■ )主任研究員宮坂泰弘2.実験方法率に関しては差がほとんど無いが、熱伝導率はCVD-SiCセラミックスが焼結SiCセラミックスに比べて約1.7倍大きい(表1)。本研究の実験配置を図1に示す。自作の高安定Nd:YAGレーザ2)から供給された波長1064 nm、パルス幅360nm、繰り返し周波数10Hzのレーザパルスを、鏡面研磨を施したCVD-SiCセラミックスと焼結SiCセラミックス上に焦点距離100 mmのレンズを用いて垂直に集光照射した。それぞれのSiCセラミックスを二軸並進自動ステージに取り付けたミラーホルダに固定して、ステージ動作時にSiCセラミックス表面の位置がレーザ集光点に対して変化しないように、レーザ変位センサーの値を確認しながらミラーホルダの角度を調整した。シャッターを用いて1回の照射で複数パルス連続照射し、照射が終わるごとにステージを駆動させて未照射面に移動した。集光プロファイルはガウシアンで、ターゲット上での集光サイズは51µm(1/e値全幅)であった。レーザのパルスエネルギーを半波長板と偏光ビームスプリッタを用いて調整することで照射フルーエンス0.5-40J/cm2まで変化させ、1回の照射におけるエネルギー変化の標準偏差は最大で±0.8パーセント以内であった。共焦点レーザ顕微鏡を用いて照射痕の中央部分の深さを測定し、照射回数で割ることでアブレーション率を求めた。レーザフルーエンスごとに複数箇所照射し、照射回数は照射痕の深さをレーザ顕微鏡で測定できるようにレーザ照射フルーエンスごとに20-6400回の範囲で調整しており、各フルーエンスで異なる照射パルス数を2-4倍変化させた場合の照射痕をそれぞれ観測した。He-Neレーザを加工レーザ照射位置に重なるように斜めに照射して、反射光をレンズとCMOSカメラを用いてSiCセラミックス表面を常時観察することで、照射中のアブレーションの進行を確認し、誤照射を防止した。− 435 −難加工材■■■セラミックスのレーザアブレーションとレーザ加工に関する研究
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