図1に倒立顕微鏡上で原子間力顕微鏡(AFM)によるヤング率測定とフェムト秒レーザー照射を同時に行えるシ1.研究の目的と背景 ・■顕微鏡下におけるハイドロゲルへのフェムト秒レーザー照射とヤング率測定ステムの概要を示す.フェムト秒チタンサファイア再生増幅器(Spectra-Physics, Solstice-Ref-MT5W)からメカニカルシャッターによって切り出した単発のレーザーパルス(130 fs, 800 nm)はビームエキスパンダーで径を拡大して倒立顕微鏡(Olympus,IX73)に導入し,対物レンズを用いて顕微鏡ステージに設置した試料へ集光した.パルスエネルギーはNDフィルターで調節し,対物レンズ通過後のエネルギーをパワーメーターで測定した.図1顕微フェムト秒レーザー照射・AFM測定システムキーワード:生体材料,ソフトマター,熱弾性応力波,ヤング率,分子透過性フェムト秒レーザーを対物レンズで透明な生体試料へ集光すると,多光子吸収イオン化をはじめとする効率的な分子の非線形イオン化現象が生じ,分子に吸収のない波長においても低エネルギーのレーザーパルス照射でプラズマ発生を誘導できる1).特にチャープ増幅された低繰り返し・高強度のフェムト秒レーザーパルスを用いると,高繰り返し・低強度のフェムト秒レーザーオシレーターを使用する場合と比較して,熱の蓄積を抑制しながら生体試料を効率よくアブレーション加工できる.その加工特性から,フェムト秒レーザーを利用した視力矯正や白内障治療,発生生物学分野での細胞や胚のナノ手術などに応用されている.近年の比較的安価で安定性の高いフェムト秒Yb(イッテルビウム)レーザーの普及に伴い,フェムト秒レーザー加工の生体試料への応用がますます盛んになることが予想される.また上記の生体試料のアブレーション加工の特徴として,熱拡散よりも短い時間スケールで緩和したプラズマのエネルギーが,集光点における熱弾性応力を急激に上昇させ,衝撃波やキャビテーションバブルの発生を誘導することがあげられる.チャープ増幅された高強度のフェムト秒レーザーパルスの集光点では試料の,熱弾性応力の上昇が顕著となり,ナノ-マイクロ秒の時間スケールで数十マイクロメートルのキャビテーションバブルの膨張収縮が生じる2).ゲルのような粘性が大きく柔らかい物質であっても,このような高速な試料の変形には追従できないため,衝撃波やキャビテーションバブルの機械的作用が生体膜の破壊や膜透過性などへ影響を与えることが報告されている2).以上の背景から,フェムト秒レーザー集光点近傍において熱弾性応力の上昇に伴う高速変形によって生体試料に生じる物理特性の変化を明らかにすることは,加工特性の理解に加えてフェムト秒レーザーの新しい利用方法を開拓するという点で有用である.そこで本稿では生体試料として細胞外基質として細胞培養などによく使用されるハイドロゲルにフェムト秒レーザーを集光し,集光点近傍で生じる物理特性として試料のヤング率と分子透過性の変化に関して調査した結果を報告する.奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科( ■■■年度奨励研究助成(若手研究者枠)■■■ ■■■ ■■■■ )助教安國良平2.研究方法AFM(JPK,Nanowizard 4)のQIモードを用いてカンチレバーを試料へ押し込み,その押し込み量に対するカンチレバーのたわみ量を試料からの反力として計測した応力-− 421 −フフェェムムトト秒秒レレーーザザーーがが発発生生ささせせるる熱熱弾弾性性応応力力をを利利用用ししたた■生生体体材材料料のの物物理理特特性性改改質質■
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