キーワード:化学気相析出,ジルコニウム炭窒化物,成膜 原子炉材や燃料の被覆など,金属材料では到達し得ない耐極限環境性を持つ高付加価値材料である.しかしながら,ジルコニウム炭窒化物は合成プロセス温度が高く,高密度焼結体の製造や加工は困難である.粉体は市販されており,焼結体や薄膜の一部は切削工具等に応用されているものの,現状では,その材料形態や応用分野は極めて限定的である. これらジルコニウム炭化物・窒化物・炭窒化物の描画やマーキング,テクスチャリングや高次構造体の造形,または,大面積・複雑形状へのコーティングなど,多様な材料形態に制御可能な製造プロセスを構築できれば,ジルコニウム炭窒化物の極限機能や特性を表面構造に付与した高付加価値材料を高効率に作製できる.これらは,高信頼かつ小型化を目指した積層コンデンサのオールセラミック化,高温域でのサーマルマネージメント材料,高温・摺動部材におけるテクスチャリング表面制御,光学制御素子のパターニング,航空宇宙部材の耐環境性コーティングなど,多分野に渡る先進プロセスとなることが期待できる.そこで本研究では,レーザープロセスと気相法を組み合わせ,これまで焼結体や薄膜材料に限定されていた材料形態の拡充を可能にする新規プロセスの構築を目指した. 我々はこれまで,高強度レーザー照射下における化学気相析出(CVD)によりセラミックスの高速気相成長に成功してきた.1,2) この場合,連続発振レーザー光をデフォーカスして比較的広域の特定・固定された位置に照射し,高速に成膜する(以降では「レーザーCVD」と記述する).本研究では,描画やパターニングの基盤技術構築のため,集光レーザーを走査しながらCVDによる選択的な成膜を試みた.このため,(I) レーザーCVDによるZrCNの気相成長の把握,(II) 集光レーザー走査型CVD機構・技術の構築,(III) 集光レーザー走査型CVDによるZrCNの線状成膜,の順に技術開発を進めた. 1.研究の目的と背景 ■ジルコニウムの炭化物(ZrC)や窒化物(ZrN)は融点が2900 ºCを超える超耐熱材料であり,金属並みの導電性を有する非酸化物セラミックスである.ZrC–ZrNは岩塩型の結晶構造をとる全率固溶系でありジルコニム炭窒化物(ZrCN)を形成する.これら炭窒化物は,超過酷環境での耐性に優れ,超音速機の耐熱部材,太陽熱発電の集光材,産業技術総合研究所■マルチマテリアル研究部門■( ■■■年度■奨励研究助成(若手研究者枠)■■■■ ■■■ ■■■ ) 主任研究員■且井■宏和■2.実験方法 ■ ・■■実験装置の概要■■ZrCNの成膜・描画試験は産総研が保有するコールドウォール式のレーザーCVD装置,および新規に構築した集光レーザー走査型CVD装置を用いた.まず,レーザー照射下でのCVDによるZrCN膜の結晶相や組成,微細組織,成膜速度を調べるために,保有するレーザーCVD装置による成膜試験の概要を下記する. 一般に,Zr系炭窒化物の原料には,塩化物やアンモニア,炭化水素など安価ではあるが,原料ガスや副生成物の毒性や腐食性により取り扱いが難しい.本研究では,原子層堆積法(ALD)の原料としても市販されているTetrakis (ethylmethylamino) zirconium(TEMAZ; Zr(NEtMe)4,99.99%,Sigma-Aldrich)を単一の原料として選定した.TEMAZ液体原料は80–100 ºCに加熱し,バブリング方式によりAr輸送ガス(8.3 × 10–7m3s–1)とともにCVD反応炉に供給した.基材は10 mmϕ,厚さ0.5mmの炭素材とした.基材をCVD反応炉内の400 ºCに加熱されたホットステージ上に設置し,基材表面には連続発振モードのNd:YAGレーザーを照射した.照射面積は約15 mmϕであり,基材表面全域に照射された.レーザーパワー密度は83–117 W cm–2であり,照射により放射温度計により測定した基材の表面温度(成膜温度)は1100–1180 ºCであった.CVD反応炉は油回転式ポンプにより減圧され,成膜中の炉内温度は300 Paとした.成膜時間は600 sとした. 得られたZrCN膜の結晶学的構成相はX線回折法(XRD; θ–2θ,■Cu-Kα; RINT2500およびSmartLab SE, Rigaku, Japan)により同定した.膜の表面および微細組織観察はFE-SEM(SEM; 5–15keV; JSM-IT300HR,JEOLCo.■Ltd., Japan)により観察した.微細構造は集束イオンビーム(FIB; FB2200, Hitachi High-Technologies Co., Japan)加工により薄片化した断面を走査透過電子顕微鏡(STEM, JEM-2100F, JEOL, Japan)により調べた.化学結合状態や組成は光電子分光分析(XPS; Escalab 250Xi XPS system, Thermo Fisher Scientific)により評価した.膜の最表面の不純物を除去するため,Arイオンによるスパッタ(3 keV, 3.6 ks)を行った後にXPSスペクトルを測定した. ■■■■■■− 411 − 集光レーザー場での高速反応・気相成長による ジルコニウム炭窒化物直接描画技術の開発
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