助成研究成果報告書Vol.35
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図4■加工対象に用いた樹脂フィルムの赤外透過率 ( ttiecnamsnarT)%0図4は、上記材料の厚さ0.1 mmのフィルムの透過率スペクトルであり、Er:YAPレーザーの波長2.92 μmを破線で示した。当該波長は、フェニル基内CH伸縮振動やOH伸縮振動の赤外共鳴波長と良い一致を示しており、PET樹脂フィルムの透過率は18%と低く、フレネル反射を考慮した吸収係数は約160 cm-1である。なお、フェニル基内CH由来の吸収はバンド幅が狭く、Er:YAGレーザーの発振波長である2.94 μmにおける吸収係数は小さいことは特筆すべき点である。また、PEの当該波長における透過率は64%、吸収係数は約40 cm-1であった。一方で、PCの赤外吸収バンドは波長2.92 μmから大きく外れており、透過率85%、吸収係数は7 cm-1未満と極めて低いことがわかった。 図3■中赤外Er:YAPレーザー加工システムの外観 ll= 2.92 μm2.22.42.62.83.0スペクトル 試料によっては加工時にヒュームが発生するため、吸煙器を稼働させた。 3.レーザー加工特性の評価 ■・■■各種樹脂材料の赤外吸収■レーザー光源波長における材料の光吸収特性は、加工スループットを左右する最も重要な因子である。本研究では、波長2.92 μmでの光吸収率が高いポリエチレンテレフタレート(PET)、中程度なポリエチレン(PE)、吸収が小さなポリカーボネート(PC)の3種類の樹脂フィルムに対して加工検証をおこなった。 100806040202.0■・ ■■■■フィルムの加工特性■厚さ0.1 mmのPETフィルムの加工を試みた。レーザー出力を0.5~2 W、走査速度を1~20 mm/sの範囲で変化させ、レーザー顕微鏡を用いて加工痕の表面形状を評価した。図5は、出力2 W、走査速度10 mm/s時の加工痕の光学顕微鏡像(左)とレーザー顕微鏡像(右、高さマッピング)である。この条件では、レーザー照射部に沿って樹脂が除去されて、フィルムが均一に切断できた。加工痕の断面プロファイルを図6に示す。(a)は、走査速度を10 mm/s時のレーザーパワー依存である。出力>1 Wでアブレーションによる溝の深さが0.1 mmを超えており、切断に成功した。一方、0.5 Wでは溝深さは30 μm程度にとどまり、切断できなかった。いずれの条件においても、溝の両側に高さ加工用顕微鏡シャッター補正レンズ吸煙器Er:YAPレーザー発振器カメラ落射照明対物レンズ試料手動Zステージ自動XYステージ PET (t=0.1 mm) PE (t=0.1 mm) PC (t=0.1 mm)Wavelength (μm)3.23.43.63.84.0築可能である(図2)。また、連続発振動作以外にも、受動Qスイッチング、能動Qスイッチングによる高ピーク出力なパルス発振動作も実証している■■。本研究課題では、加工検証のほかにも、Er:YAPレーザーの更なる高出力化のため、主発振器出力増幅(MOPA)特性の評価■■や波長0.98 μmと波長1.7 μmで同時に端面励起する新たな出力増強手法を実証した■■(引用文献を参照)。本報告書では、レーザー加工検証試験の結果を中心に解説する。  ・ ■レーザー加工システムの構築■開発したEr:YAPレーザーを光源としたレーザー微細加工光学系を構築した。図3は、システムの外観写真である。ここでは、全てのオプティクス類に金ミラーおよび赤外透過材料を用いており、試料台を2軸自動ステージと手動z軸で高精度に移動させることで、高スループットな加工を可能にした。2.92 μmは水蒸気の吸収ラインから外れており、大気吸収による伝送損失は極めて小さい。レーザー発振器は、最大出力3.6 Wで安定動作が可能で、出力3 W時のM2は1.8~2.0程度である。対物レンズには焦点距離12.7 mmの非球面ZnSeレンズを採用し、ビームスポット半径は約10 μm(レイリー長0.05 mm)と見積もられる。極めて安定な動作が可能な出力2 Wを最大として加工を行い、このときのレーザーの最大強度は640 kW/cm2に達する。 − 400 −

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