A試験片については,ひずみを導入した試験片(LC-SP-A-D)の降伏強度は1174MPaとなり,ひずみを導入していない試験片(LC-SP-A)の1067MPaに比べて少し高い値を示した.B試験片については,LC-SB-P-D試験片の降伏強度が1083MPaとなり,LC-SB-P試験片の1013MPaより高い値を示し,単一パケットのA試験片および単一ブロックのB試験片のいずれにおいてもひずみ導入により降伏強度が上昇していることが確認できる.極低炭素鋼4.結言謝辞参考論文た.A試験片は複数のブロックより構成されるが,各ブロックは試験片幅を貫通しているため,変形初期における降伏挙動が一つのブロックから起こることを考えると,A試験片は単一パケット構造体ではあるものの降伏に関しては単一ブロックの挙動に見立てて検討することができる.比較のために,予ひずみを与えていない試験片も作製し,力学特性を評価した.図6高ひずみを受けたラスラスマルテンサイトから採取したマイクロ引張試験片より得られた公称応力–公称ひずみ曲線ラスマルテンサイトを対象に弾性限や降伏挙動に対する転位組織の影響を調査した中島ら8)の研究によれば,焼入れマルテンサイトに予ひずみを加えると,弾性限や降伏応力が上昇するのは変態時に導入された可動転位が互いに反応して消失し,残留したものが転位のセル組織を形成するためと報告している.本研究で行った低炭素鋼ラスマルテンサイトの単一パケットおよび単一ブロック構造体において,ひずみを導入した試験片における降伏強度の上昇が見られた.これは予ひずみにより形成された転位セルに起因するものと考えられる.中炭素鋼ラスマルテンサイトの単一パケット構造体に対してマイクロ引張試験を行い,力学特性に及ぼす晶へき壁面方位の影響を明らかにした.また,予ひずみを導入した低炭素鋼ラスマルテンサイト鋼に対してマイクロ引張試験を行い,力学特性に及ぼす下部組織の影響について検討した.得られた結果を以下に示す.1.中炭素鋼ラスマルテンサイトの単一パケット構造体における降伏挙動は,低炭素鋼ラスマルテンサイトと同様に晶へき面方位に強く依存していた.2.引張荷重を与えたバルク試験片から微視組織構造に対応した微小試験片を採取し,再度引張試験を行うことに成功した.3.低炭素鋼ラスマルテンサイトの単一パケットおよび単一ブロック構造体において,予ひずみの導入により降伏強度が上昇した.このことは,予ひずみ導入中に発達した転位組織に起因すると考えられる.本研究は,公益財団法人天田財団の奨励研究助成(若手研究者枠)AF-2019045-C2によって実施したものである.ここに深く感謝する.1)R. Kuziak,R. Kawalla,S. Waengler,ACME 8 (2008) 103-117.2)G. Krauss,Mater. Sci. Eng. A 273-275 (1999) 40-57.3)S. Morito,H. Tanaka,R. Konishi,T. Furuhara,T. Maki,Acta Mater.51 (2003) 1789-1799.4)S. Morito, Y. Edamatsu, K. Ichinotani, T. Ohba, T. Hayashi, Y.Adachi, T. Furuhara, G. Miyamoto, N. Takayama, J. Alloys Compd.577S (2013) S587-S592.5)A. Ebrahimian,S.S. Ghasemi Banadkouki,J. Alloy. Compd.708 (2017) 43-54.6)K.Kwak,T.Mayama,Y.Mine,K.Takashima,Mater.Sci.Eng.A 674 (2016) 104-116.7)Y.Mine,K.Hirashita,H.Takashima,M.Matsuda,K.Takashima,Mater.Sci.Eng.A 560 (2013) 535-544.8)中島孝一,藤村佳幸,松林弘康,土山聡宏,高木節雄,鉄と鋼93(2007)459-465.− 398 −
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