キーワード:摩擦攪拌成形,機械的接合,新機能複合材料 Fig. 1 Schematic Drawing of FSF7). 1.研究の背景と目的 ファイバブラッググレーティング(FBG)センサの開発は,航空機のスマートパーツの軽量化とインテリジェントな航空管制を実現するために不可欠である.FBGセンサの開発では,部品の基材に光ファイバセンサ(FOS)を埋め込む技術が必要となるが,チタン系材料のような高融点合金に繊維を欠陥なく埋め込むことは困難である.世界中の航空会社が航空機の保守,修理,およびオーバーホールに費やす金額は,2015年には約500億ドルであり,2020年には6250億ドルに増加すると予想されていた1).航空機システムがより複雑で高性能になるにつれ航空機の軽量化と低燃費化のニーズは継続的に高まり,それに伴って航空機の品質,信頼性およびヘルスコンディショニングシステムの予測能力を向上させる革新的技術の開発が重要となった.FBGセンサは光の反射波長のずれを介して変形,歪み,圧力および温度などの異なるパラメータを同時に測定する能力を有する,非常に魅力的な特殊タイプのFOSであり,非常に正確な測定や構造物の内部状態の監視への応用が期待されている.FBGセンサの研究としては,航空機のフレーム,風車の羽根,高性能自動車などに使用されている炭素繊維強化複合材料などの複合材料内部に光ファイバを埋め込む研究が多く,金属へのFOSの埋め込みに関する研究は極めて少ない.チタンのような高融点金属はセンサを過酷な環境から保護することができるが,金属への埋め込み工程中には厳しい条件が存在し,キャスティングやホットプレスのような方法も容易に使用することはできない. Ti-4.5Al-3V-2Mo-2Fe(商品名SP-700)2)は,航空宇宙産業用に開発された微細構造を持つβリッチな超塑性チタン合金であり,加工性に優れ,超塑性特性を持つため,複雑な航空機・航空宇宙用部品の成形に適している.フォイルゲージに基づく従来法は,電気接点によって生じる故障に対処するために冗長性を必要とするため,金属の内部で正常状態の監視を実行することはできない.従来の技術においては通常,埋め込みプロセスによるダメージを防ぐため,FOSは金属コーティングされている.さらに,金属保護コーティングの材料と多孔度は,埋め込まれる繊維の接着に影響し,滑りやコートの剥離を引き起こし,それを堆積技術を使用して解決しようとすると,FOSを保護するために大きな金属コーティング(2 mm)が必要となるとい国士舘大学 理工学部理工学科機械工学系 准教授 Mofidi Tabatabaei Hamed (2019年度 奨励研究助成(若手研究者枠)AF-2019044-C2) う課題が残されている3).別法として超音波溶接が知られているが,プロセスの温度が低いためセンサの用途が制限される4).真空ろう付け技術はFOSを用いた操作にある程度の柔軟性を与えるが,真空チャンバーを必要とするため複雑で高価である5).また,セレクティブレーザー溶融(SLM)もFOSを埋め込む方法として有望であるが,金属用の3Dプリンタは高価で入手しやすいものではない. 近頃,摩擦攪拌接合(FSW)6)の原理を用いた金属の新しい成形方法として,「摩擦攪拌成形(Friction Stir Forming; FSF)」7)が異種材接合分野で注目を集めている8).本法の開発者である国士舘大学の西原公教授はFig. 1 に示すように,被加工材を金型の上に置いて,被加工材裏面に摩擦攪拌を施すことで,金型形状を被加工材に転写することを提案した.本研究では,このFSFを用いることでチタン合金と光ファイバを機械的に接合させる新規の異種材接合手法を提案するが,これは前述の要求を効果的に満たすものである.本研究は,FSFを用いて光ファイバをその特性を損なうことなくチタン合金内部に埋め込んだ,新規機能を持つ複合材料の開発についての実験的検討を目的とする.この新規複合材料をスマート構造の基礎材料として導入することにより,ホストチタンの内部状態(温度と歪み)を検出するためのセンサとして機能することが期待できる.これにより,光ファイバの適用範囲は航空機用途に限定されず,回転機械,車両構造,およびリアルタイムの状態監視システムを必要とする航空宇宙産業や人工知能システムにおける用途にまで拡大することが期待される. − 389 −摩擦攪拌成形(FSF)を用いたチタン合金と光ファイバの 機械的接合による新規スマート複合材料開発の試み
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