助成研究成果報告書Vol.35
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キーワード:板材成形,冷間プレス成形,プレスモーション,Ti-6Al-4V合金板,絞りしごき加工航空宇宙分野では,Ti-6Al-4V合金は,航空機エンジン用ならびに機体用素材として活発に適用されている1).また,近年自動車エンジン部品,オートバイ排気系部品としての用途も広がりつつある2).しかしながら,冷間における延性が乏しく,プレス成形等の塑性加工においては延性が向上する700~900 ℃程度の温度領域で成形が行われるのが一般的である.そのため,プレス成形では,短時間でTi-6Al-4V合金板を所望の加工温度に加熱可能なホットスタンピング法が開発3)~5)されている.ホットスタンピング法は,特に800~900 ℃の温度範囲での成形に適用されている6).また,Ti-6Al-4V合金板のインクリメンタルフォーミングにおいては,必要とする塑性変形進行域において加熱を行い,成形が終了した領域は温度を下げることが望ましい観点から,高周波誘導コイルを用いた局所加熱によって成形域を所望の加工温度として700 ℃近傍で成形する手法が開発され,Ti-6Al-4V合金板に大変形を与える成形を実現している7)~9).また,Ti-6Al-4V合金板の400 ℃の成形温度で絞り比(Drawing ratio, DR)=1.8の円筒絞りを達成している10).一方で,Ti-6Al-4V合金板の温間,熱間成形においては,近年有限要素解析も適用され始めている.フローフォーミングにおいて,シングルローラー,3ローラー,ウェッジローラーの3つの異なるローラー配置によるフローフォーミングプロセスがモデル化され,ロールの送り速度や減肉率等のパラメータとフローフォーミングにおける成形性を相関させる試みが行われている11).また,プレス成形では,有限要素解析を併用した成形工具設計の試みにおいて,成形時の形状誤差を低減させるための成形工程の最適化,低コスト化について論じられている12). 一方で,Ti-6Al-4V合金板の常温での成形における研究例は,常温での成形限界の決定や曲げ成形性の測定13),14),または,常温での磁気パルスバルジ成形が試みられており,成形限界が向上する結果を得ている15),等の成形としての報告が少ない.しかしながら,常温~温間(24~300 ℃)での成形は,生産時の低コスト化,量産性向上などのメリットが考えられ,冷間成形に取り組む前に,Ti-6Al-4V合金の温間プレス成形において,成形性向上技術として着目,適用されているプレスモーション15),16)を活用することで,筆者らは,低延性の条件下においても成形可能となる手法を開発した.開発した手法では,低延性の材料において薄肉化の進行を促す一つの要因となるしわ抑え力に着目し,材料に変形を付与する際には,しわ抑え力を負荷しない状態で成形する発想に至った17),18).具体的には,従来のプ東京都立産業技術研究センター 開発本部 物理応用技術部 機械技術グループ 1.研究の目的と背景 主任研究員 奥出 裕亮 2.冷間絞りしごき成形実験条件および結果 レスモーションと異なり,パンチとしわ抑え板の稼働をそれぞれ独立して行い,しわ抑え力を負荷しない状態でパンチを稼働する工程と,瞬間的に材料にしわ抑え力のみを負荷する工程に分離し,それぞれの工程を交互に行う逐次成形法を開発した.さらに,逐次成形法では,フランジ部の厚肉化が顕著に生じるため,厚肉化を抑制するために,絞り成形を逐次成形後に実施することで厚肉化を回避する手法を開発した19),20) .本研究ではTi-6Al-4V合金の温間逐次成形から得られた知見を発展して,Ti-6Al-4V合金板の冷間絞りしごき成形に適用し,有限要素解析と実験により常温における成形法の効果を実証した.2・1 供試材および試験装置 Ti-6Al-4V合金板の冷間成形における円筒深絞り成形性を評価するために,一般的な一定しわ抑え力(Blank Holding Force, BHF)を負荷する円筒深絞りを最初に行った.Ti-6Al-4V合金板(板厚t0 = 0.5 mm,= 60 mm)を用いた.後述の絞りしごき成形と同条件で評価するために,フランジ部の摺動補助を目的として,成形前のブランクには,大気炉において500 ℃で2時間保持することで表面に3000Å程度の酸化被膜を生成した.試験機にはエリクセン試験機(Erichsen社製,140 - 40型)を用いた.図1に,円筒深絞り成形の模式図を,表1に,本実験に使用した成形部の寸法を示す.ダイス材質はSKH51(JIS)とし,ダイス内径Dd = 33.8 mm, ダイス肩半径Rd = 3.0 mm とDd = 34.0 mm, Rd = 3.0 mmの2種類を用いた.この場合,絞り比DR は1.85となる.図2の絞りしごき成形模式図に示すように,板材から絞り成形を行う際のクリアランスt’を初期板厚t0以下に設定することでカップの成形と同時に肉厚をしごく工程を行う絞りしごき成形を対象に,これらの絞りダイスにおいて公称しごき率はDd = 33.8 mm(公称しごき率(t0 - t’ )/ t0×100 = 20 %),34.0 mm(公称しごき率0%)を採用して試験を行った. 2・2 試験結果 試験温度は金型およびブランクを常温(24 ℃)として試験を行った.パンチ速度は60 mm/minとし,一定しわ抑え力は4 kNで負荷した.ブランクと金型間は無潤滑で円筒深絞り成形を行った.図3に,円筒絞り実験結果として実験後のカップ写真を,図4に,パンチ荷重–パンチストローク曲線を示す.Dd = 33.8および34.0 mmの金型どち(2019年度 奨励研究助成(若手研究者枠)AF-2019041-C2) − 374 −Ti-6Al-4V 合金板の冷間プレス成形法の開発

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