図1 ファイバー縫い付け機(株式会社TIMS,TCWM-図2 提案している熱可塑性複合材の作製方法 キーワード:CFRTP,プレス成形,局所異方性 1.研究の目的と背景 101)のヘッド部分 近年,炭素繊維強化複合材料(CFRP)の機械構造物への適用は益々拡大してきており,航空機やスポーツ用品のみではなく,自動車などの大量生産品への適用も期待されている.従来の熱硬化性CFRP(CFRTS)は成形時間が長く,大量生産には不向きなため,塑性加工も可能な熱可塑性樹脂を用いたCFRP(CFRTP)の研究・開発が盛んに行われている.また,①ロボットアームによる自動積層,②3Dプリンター,③刺繍機を援用した装置など,新たな複合材の成型技術が開発・実装されている.これにより,これまでの一方向にのみ強化繊維を配向した均質な異方性材ではなく,繊維を曲線状に配置,また部分的に配向角を変化させるなど,局所的な異方性を有する複合材の製造が可能となった.局所的な異方性は目的に合わせて最適に分布することで,従来よりも優れた構造の実現が可能である1), 2). 上記の新たな製造方法のうち,最も大量生産に適した製造法は,③刺繍機を援用した装置(ファイバー縫付機)であるが,この装置による効率的なCFRTP材の作製方法は確立されていない.また,塑性加工後の立体形状を考慮した最適な局所異方性配置の設計方法が必要である.すなわち,本研究は,近年の複合材研究動向における「CFRTP材による利用拡充」,「局所異方性構造の実装」という二つの流れを融合し,新機能複合材の開発を目指す. 2.実験方法 2・1 局所異方性複合材の作製方法 図1にファイバー縫付機による炭素繊維プリフォームを作製している様子を示す.ファイバー縫付機では,ボビンから供給される炭素繊維束(CFトウ)を基材に針と糸で縫い付けて固定する.ヘッド部分は旋回可能であり,また機材を固定しているフレームが自由に平面移動可能なため,曲線状の強化繊維配置が可能である. 従来は炭素繊維やガラス繊維の平織材を基材として採用し,CFトウを縫い付けた後に,真空樹脂含浸(VaRTM)法などにより熱硬化性樹脂を繊維間に含浸し,熱硬化することで複合材とする(図2中段).これが複合材の軽薄化を妨げ,また非対称性による成形後の歪みとなることがある.一方,申請者の提案方法では,図1のように,ポリプロピレン(PP)などの熱可塑性シートを基材として採用北海道大学 大学院工学研究院 機械・宇宙航空工学部門 (2019年度 奨励研究助成(若手研究者枠)AF-2019036-C2) 准教授 本田 真也 し,直接,繊維をPPシートに任意の形状で縫い付ける.その後,熱間プレス(200℃)により,基材となったPPシートを樹脂内へ押し込むことで,熱可塑複合材を成型する(図2下段).通常のPPシートでは粘度が高く,繊維間に樹脂がうまく含浸しないが,マレイン酸変性ポリプロピレンを混合したPPシートを用いることで,樹脂粘度が低下し,樹脂がよく含浸することが知られている.一方向材の引張試験の結果,本手法で作製した熱可塑性複合材は市販品と同等の剛性(およそ120 GPa)を持つことがわかっている3)が,今回は加工成形が目的のため,プリフォームの基材としてシート状のポリプロピレンのみを用いた. Fiber bundleConventional method (Thermosetting resin + VaRTM)Fiber bundleThe proposed method (Thermoplastic resin + Hot press)ThreadBase mateialThreadImpregnation by hot pressBase mateial(Resin-rich layer)No Resin-rich layer− 356 −絞り加工により成型した局所異方性を有する 熱可塑性複合材の最適設計に関する研究
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