1.研究の目的と背景キーワード:窒化アルミニウム,カーボンナノチューブ,レーザー加工構造用セラミックスに代表されるAl2O3やAlNは高硬度かつ高強度であるため機械加工が困難であり製品価格の70%が加工コストと言われている1,2).セラミックスが金属に比べて優れた硬度,耐熱性,耐食性をもちながら,その実用化が制限されている大きな要因はその加工コストからくる高価格にあると言われている.この高価な加工コストのため,セラミックスは金属に比べ強度,耐熱性,耐摩耗性,耐腐食性などの優れた特性を持ちながら,その応用範囲が制限されてきた.そこで,我々は低コストで加工できるレーザー加工に注目した.近年,小型のファイバーレーザー加工機の出現により加工機器価格が大幅に下がってきたため,その実用的な加工範囲の把握は,今後の加工分野のみならずセラミックス分野の動向に影響を与えると予想される.特に,急激に需要の伸びている電子部品の基板に用いられるセラミックスでは複雑なパターンを必要とするが,比較的薄い0.5~2mmの薄膜であることが多くレーザー加工の適応性が高く,単なる加工分野の研究のみならず,電子部品産業にも刺激を与える研究になると予想される.現在のところ,耐熱性が高いためレーザー加工が困難と考えられている構造用セラミックスの加工例や実績は,樹脂や金属材料に比べ圧倒的に少ないと言える.Al2O3やZrO2などでは加工例が報告されているが,加工可能かどうかという装置性能重視のポイントに焦点が置かれているため,加工できるようにするためには「何を改善すべきか」材料からのアプローチは全く進んでいない.本研究では,セラミックスをレーザー加工し易くするためにカーボンとの複合材料について検討を行う.耐熱性の高いカーボンは決してレーザー加工しやすい材料ではないが,レーザー光の吸収が良く,Al2O3の約3分の1程度の出力で加工可能である.そのため,Al2O3を加工する際にはレーザー加工をスムーズに導入するため,表面にカーボンの罫書きが施されることがある.これより,レーザー難加工性のセラミックスにカーボンを複合化することによって,レーザー光の吸収を促進し,何らかの加工性の向上が期待できる.また,レーザー加工における複合材料の知見としてはCFRPがほとんどであるが,高硬度材料であるセラミックスの複合材料においては報告例がなく理学的にも興味深( ■■■年度一般研究開発助成■■■ ■■■ ■■■■ )香川大学創造工学科教授楠瀬尚史い研究となることが予想される.カーボンを複合化した場合,レーザー加工に与える効果としては,レーザーエネルギーの吸収体としての役割があるカーボンはレーザー光によって昇華するほどのエネルギーを蓄えることができることが報告されている.この分散されたカーボンが得たエネルギーを隣接するセラミックスにも伝搬することができれば,セラミックスのレーザー加工性を改善することが期待できる.このようなカーボン分散セラミックスにおいて理想的なカーボンの材料は,カーボン材料の中でも最も高い光吸収性能を有し,さらにより少量で連続的にマトリックス中に分散できるカーボンナノチューブ(CNT)にあると思われる.一般的なアスペクト比100程度のCNTを複合化した場合,三次元的に連続した構造を形成するために1~3vol%程度のCNT添加が必要になる.しかしながら,我々は長さが600μm程度ある長尺単層CNT(SWCNT)をセラミックス中に分散することにより従来の10分の1のわずか0.1vol%添加するだけで三次元的な連続相を形成できることを確認している(図1(a)(b)).これより,より均一にセラミックス中にレーザーエネルギーを取り入れることが可能になり,より低出力のレーザー出力で加工が可能になると期待できる.図■■■■■のアスペクト比(直径d✕長さ■)が本研究では,長尺SWCNTを均一に分散するためにイオン性の界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS),非イオン性界面活性剤であるポリビニルピロリドン(PVP)を界面活性剤として加え,より少量のCNTを連続的かつ均一に分散できる作製条件を検討す連続的に均一な分散に与える影響− 325 −極微量長尺単層カーボンナノチューブ添加による高硬度セラミックスのレーザー加工性の改善
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