図9に高速度カメラを用いてシャドウグラフ法で観察したプラズマ閉じ込め層を示す。レーザ照射後、100ms経過後のプラズマ閉じ込め層の像であり、レーザの進行方向についてはグリーンの三角形で表している。(a)はグリセリン濃度20wt%、(b)は80wt%の場合をそれぞれ示している。両者共にキャビテーションバブルの存在が観測できるが、(a)ではバブルが光路から移動しているのに対して、図8にグリセリン水溶液濃度20wt%における圧縮残留応力測定結果を示す。レーザ強度は2GW/cm2、カバレッジは900%の設定である。図は試料表面からの応力の深さ分布であり、同条件で測定した水の場合の結果も比較とし図4~6に示したように、水温変化、媒質変化共に、レーザピーニング効果が向上している。両者共に簡便な制御図4および図5に示した結果からは水温60℃のときに最も高いレーザピーニング効果が得られている。これらは図2に示した音響インピーダンスの温度依存性と矛盾しない。したがって、音響インピーダンス制御はレーザピー図6に示したレーザピーニング効果のグリセリン濃度依存性については、低濃度においては、図3の音響インピーダンスの増大による効果向上で説明できるが、高濃度においては図3と矛盾する結果となっている。また、図75.考察グリセリン水溶液の濃度を増加させると、ビッカース硬度が変化することが判る。硬度は20~60wt%の範囲で増加しているが、本実験の最大濃度である80wt%では減少に転じている。これらの実験結果は図3で示した音響インピーダンスの増加によるプラズマ閉じ込め能力向上と矛盾している。また、硬度はカバレッジの増加に対して単純に上昇しており、高いカバレッジはいずれの濃度においてもレーザピーニング効果向上に有効であることが判る。図7には各グリセリン水溶液濃度における試料表面でのレーザ照射の痕跡(バーンパターン)を示している。低濃度のときは、設定したカバレッジ900%に従って、規則正しくバーンパターンが並んでいるが、濃度80wt%においてはバーンパターンが不規則に並んでおり、レーザ光が試料まで到達していないことが示唆される。高濃度におけるレーザピーニング効果の低下はレーザ光が適切に照射されていなかったことが原因である。て示している。本実験においては、金属表面で引張残留応力が付与されてしまっているが、金属の内部は圧縮残留応力となっている。20 µm程度の深さをピークとして、約100 µm程度の深さまで圧縮残留応力が付与されている。残留応力分布形状は両者ともに同様となっているが、グリセリン濃度20wt%の方が圧縮残留応力の最大値は大きく、高い音響インピーダンスの効果が表れている。金属試料表面では、レーザ光による蓄積熱の影響より、試料表面にへこみや溶融が生じ、引張応力になったと考えられる。圧縮残留応力が付与される深さは、本研究では100µm程度であったが、レーザの集光径、重ね打ち率、レーザ強度等のレーザパラメータ変化によって、さらなる深層処理は可能である。であり、複雑な作業を伴わない。特に水温変化の結果は「お湯」をプラズマ閉じ込め層に用いることで一定のレーザピーニング効果向上が見込めることを示しており、実用性は高いと考えられる。ニング効果の向上に有効であることが判った。の結果からは高グリセリン濃度においてレーザ光が試料表面にまで到達していないことが示唆された。グリセリン水溶液は濃度が50wt%を超えると急激に粘度が上昇する。また、高ピークパワーのレーザを液中に集光照射すると焦点近傍でキャビテーションバブルが生成することが知られている。高粘度の溶液では、流動性が失われ、キャビテーションバブルの成長・移動・崩壊が生じる速度が遅くなる。高繰り返しレーザ照射においては、キャビテーションバブルが消滅する前に次のレーザパルスが到達する可能性が考えられ、この場合、液体とキャビテーションバブル界面においてレーザ散乱が生じる。図8グリセリン水溶液濃度20wt%のときの試料深さ方向の圧縮残留応力分布図9シャドウグラフ法によって測定したレーザ照射後100 ms後におけるプラズマ閉じ込め層内のバブル(a)グリセリン濃度20 wt%, (b)グリセリン濃度80wt%,− 306 −
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