図2 ガス浮遊法を用いた急冷システム。ガスノズルを2個に分割することによって試料を落下させ、ソレノイドにより駆動される金属ハンマーによって試料を急冷する。図3ガス浮遊ノズルの分割機構。ノズルの分割により試料を落下させる。図4は本研究で作製したガス浮遊溶解装置の外観を示し、図5はガス浮遊溶解装置の内部の写真である。ガス浮遊ノズルの分割には空圧を用いた。チャンバー内は真空排気後にArを導入し約1気圧に保ち、試料の温度測定は超高速放射温度計(IMGA740 –LO)を用いた。図4ガス浮遊溶解装置の外観2.実験方法シリコンの場合、半導体である固体は融解すると金属になるが、このような試料であっても静電浮遊法であれば安定して浮遊保持でき、融点以下数百Kの過冷状態を実現することが可能となる。こうして過冷させた液体シリコンを、図1に示すように、銅製の2個のハンマーで挟み込むことによって過冷却液体シリコンを急冷しアモルファスシリコンを得ることができた。この実験から明らかになった重要なことは、①過冷却液体を用いることによって液体シリコンから直接アモルファスシリコンが形成されること、②アモルファスシリコン形成の際に潜熱が発生するため、これを除去する必要があること、の二点である。潜熱は約40kJ/molと見積もられ、これが全て熱に変換したとすると1500K以上の温度上昇に相当する。このため、一度生成したアモルファスシリコンが潜熱によって結晶化する恐れが常にある。図1の方法では潜熱を取り切ることができず、アモルファスシリコンの収量はおよそ10%にとどまった。潜熱は液体シリコンとアモルファスシリコンの構造と物性の差に起因する。液体シリコンは配位数6の金属であるのに対し、アモルファスシリコンは配位数4の半導体である。このために液体シリコンからアモルファスシリコンが形成される際には本質的に多量の潜熱が放出される。図1の手法における冷却速度は急冷速度が104-5K/secにとどまるため、過冷却液体シリコンからアモルファスシリコンが形成される際に生じる潜熱を完全に取り除くことは難しい。また、バルク試料を得ることができる他の急冷方法における急冷速度も104-5K/sec程度であるため、浮遊法を用いて液体シリコンを300K以上過冷させたとしても、ここから急冷によって結晶シリコンが混じらないバルク状のアモルファスシリコンを作製することは非常に難しいと考えられる。液体シリコンからバルク状のアモルファスシリコンを作製するためには、アモルファスシリコンが形成される際に発生する潜熱によってアモルファスシリコンが結晶化することを防ぐ必要がある。そのための方策として、我々は金属-シリコン系の液体共晶合金に着目した。これらの液体共晶合金は融点(共晶温度)以下になると金属とシリコンに相分離して固化する。また共晶温度がシリコンの融点(1683K)よりもはるかに低く、合金系によっては1000K以下であることに着目した。融点が1000K程度の材料は試料を十分に帯電させることが難しいため、図1の静電浮遊溶解装置を用いることができない。そこで、本研究ではガス浮遊法とレーザ加熱を組み合わせた急冷凝固装置を開発し、金属―シリコン系の液体共晶合金の急冷実験を行った。ガス浮遊法は、ノズルから噴き出すガスによって試料を浮遊保持し、加熱レーザの照射によって試料を融解する方法である。本研究では図 に示す急冷システムを備える装置を作製した。この装置はガスノズルが2つに分割されるように設計されている。試料を浮遊溶融させている間、ノズル一体となっているが、試料を急冷凝固させるときは、ガスノズルが つに分離し、開いた穴から試料が落下する(図■)。ガスノズルの真下には、ソレノイドによって 個の金属ハンマーが動き、試料を挟み込むことによって急冷する。試料加熱にはnLight製半導体レーザ(波長975nm、出力100W)に集光レンズを組み合わせて用い、試料の浮遊にはアルゴンガスを用いた。− 301 −
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