助成研究成果報告書Vol.35
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図5 表面改質後に無電解Cuめっきを行った結果 図5にSH光で表面改質を行った試料に無電解Cuめっきを行った結果を示す。照射パワー30 mW以下の照射条件では走査速度に関わらず全くめっきが析出していない。一方、40 mW以上では走査速度2 mm/s以下の条件でめっき析出しないことが確認された。表面改質条件の内、60 mW以上・10 mm/s以上の領域でめっき選択析出性が確認できるが、概ね走査速度が速い方が良好な様に見える。 図7 無電解めっき後(左)、90°剥離強度試験後(右) (参考) 基本波 での最適条件 × × 図6 SH光照射による表面改質後およびめっき後の表面状態と粗さ × 表面改質後めっき後Ra 0.25 μm ( 撥水 ) 30 mW 2 mm/s Ra 0.64 μm ( 撥水 ) 60 mW 20 mm/s 80 mW 20 mm/s Ra 1.36 μm Ra 1.38 μm 80 mW 1 mm/s Ra 14.68 μm ( 撥水 ) Ra 3.4 μm より詳しくこの差について調査するために、各表面処理後およびめっき後の樹脂表面についてレーザ顕微鏡により観察した結果を図6に示す。未処理のPPS樹脂表面はRa 0.25 μmで、直径数μm程度の穴が無数に空いている。30 mW・2 mm/sの条件の場合、横線の加工痕は確認できるが溝は浅く、Ra 0.64 μmであった。しかし、この条件の改質箇所は親水性が向上せず、めっきは析出しない。60 mW・20 mm/sおよび80 mW・20 mm/sの条件ではRa 1.3 ~ 1.4 μm程度と加工痕が明確になり親水性が向上し、無電解めっきの析出性も良好である。照射パワー80 mWの条件では点状にめっき未析出箇所が確認できるが、60 mWの条件では表面改質時に形成された筋状の模様に沿って一様にめっきが析出している様子が観察され、点状欠未処理 陥も無く均一な無電解めっきが行えている。80 mW・1 mm/sの条件では、Ra 14 μm以上の表面粗さがあり、またSH光照射部は光沢を示していた。これはSH光の過剰照射により表面の樹脂が変形・溶融を経たことが示唆される。この条件についても改質箇所は撥水性を示していることから、めっきは析出していない。比較として基本波(λ = 1,030 nm)による最適条件で表面改質を行ったPPS樹脂の表面状態を示した[5]。基本波の場合には、ガルバノスキャナとf-θレンズを用いて高速に描画することが可能であり、最適条件の照射パワー 500 mW、走査速度 100 mm/sのとき表面粗さはRa 3.4 μmであった。基本波の最適条件とSH光の照射結果を比較すると、表面改質部の表面粗さを低減させる効果があることが明らかとなった。これはPPS樹脂の近赤外領域と可視域での吸光度および反射率が影響したものと考えられる。 次に、現時点におけるSH光の最適条件(60 mW・20 mm/s)でめっきの密着強度について評価を行った。上述の無電解Cuめっき後に硫酸銅浴による電気めっき(膜厚25 μm)を行い、90°剥離強度試験を行った。幅10 mmのパターンを形成した無電解めっき試料と、90°剥離強度試験後の写真を図7に示す。めっきの剥離強度は非常に弱く0.4 N/cmであり、さらにめっき剥離面には電気めっきの際に液の浸透あるいはエッチングされた痕跡が見られた。60 mW・20 mm/sのSH光改質条件は親水性の向上によりめっき析出はするものの、樹脂表面へめっき金属を強固に結合させるための化学種や物理的アンカー構造を有していないことが示唆される。 − 289 −

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