図2 PPS樹脂の分子構造(左)と試料の写真(右) 図1 SKW-L2工法の工程(左)と3D-MID製作例(右) 岩手県工業技術センター 機能材料技術部 上席専門研究員 目黒 和幸 (2019年度 一般研究開発助成 AF-2019206-B2) SKW-L2工法の光源の超短パルスレーザには、Light Conversion社のPHAROS-4Wを使用した。このレーザは、最大出力4 W、中心波長1,030 nmのYb:KGWレーザである。fs発振したレーザ光をチャープパルス増幅する際、再生増幅部で繰返し周波数を1~200 kHz、パルス圧縮器でパルス幅を260 fs~10 psの範囲で調整できる。可変アッテネータによるパワー調整と空間フィルターによるビーム整形を行った基本波に対して第二次高調波(SH, λ = 515 nm)を発生させ、自動XYステージを用いた加工システムを構築して樹脂の表面改質実験を行った。 1. 研究の背景と目的 2. 実験 キーワード:三次元成形回路部品(3D-MID),表面改質,無電解めっき スマートフォンなどの携帯型情報通信機器や自動車および車載機器において、CMOSイメージセンサ、加速度・傾斜センサ、各種LEDなどの実装部品点数が増加傾向にある。これらの機器では限られた空間内に効率的に電子回路基板を配置したいというニーズが高まっており、三次元成形回路部品(3D-Molded Interconnect Device ; 3D-MID)[1]が解決策の一つとして期待されている。3D-MIDは、樹脂成形体表面に金属膜で三次元的な電子回路を形成した機械的機能と電気的機能を兼ね備えた高機能部品であり、一般的なプリント配線板と比較して、省スペース化・軽量化、自由度の高い設計、部品点数および組立工数の削減など、様々なメリットがある。3D-MIDの製造方法は各メーカーから様々な工法が提案されているが、三共化成(株)と筆者らのグループで開発を進めてきたSKW-L2工法[2]は、樹脂材料へ特殊な添加物の混練あるいは樹脂成形体表面への事前処理を必要とせず、市販されている様々な種類やグレードの樹脂に適用可能なユニークな工法である。SKW-L2工法は、図1に示すように樹脂成形体表面に局所的にレーザ光を照射して表面改質を行い、その後の湿式処理による選択的な無電解めっきで配線パターンを形成するアディティブ工法である。表面改質用のレーザ光源として超短パルスレーザを用いることで、可視域で透明なPC(ポリカーボネート)樹脂や難めっき材料であるPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂等への微細配線パターン形成を行うことができる[3, 4]。しかしながら、樹脂表面をレーザ加工するため、現状のSKW-L2工法では少なからず表面が粗化されており(典型的にはRa 2~5 μm)、金属めっき膜の密着メカニズムは樹脂の表面粗さによるアンカー効果が支配的であるとされている。これからの携帯端末や車載機器では次世代移動通信システム(Beyond 5G / 6G)への対応が不可欠であり、3D-MIDにおいても高周波伝送に対応するべく低誘電率・低誘電正接の樹脂材料への適用と、導体損失を低減させるための平滑界面を持つめっき配線技術が求められる。 本研究では、短波長化した超短パルスレーザによる樹脂表面改質における照射パワーおよびビーム走査速度などの加工パラメータの最適化を検討し、SKW-L2工法の樹脂表面粗さの低減の可能性を調査した。 実験には、図2に示すPPS樹脂の板材(厚み2 mm, 東レプラスチック精工 無充填グレード PPS-2000)を用いた。PPS樹脂は耐熱性・寸法安定性・耐薬品性に優れ、電気自動車関連で3D-MID化のニーズが高い。PPS樹脂試料は中性洗剤、純水、エタノールで脱脂洗浄を行った後、十分に乾燥させてから使用した。 レーザにより表面改質された試料は、表1に示す工程で無電解Cuめっきを行い、局所めっきの可否について評価を行った。 − 287 −超短パルスレーザによる表面加工と選択めっきを用いた 配線パターニング技術の開発
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