4.結論ヤーが強く吸着するようデザインされている.従って,曲げると却って銀ナノワイヤーが折れやすい.他方,疎水性のポリイミドシートの場合には,屈曲時に一時的にシートから銀ナノワイヤーがはがれ,銀ナノワイヤーどうしの交叉がはずれて電導性がやや低下するが,銀ナノワイヤーは折れていないので,平らに戻すと交叉が復活して,電導性が回復する,可逆的な電導性を示すのだろう.機械分野では塑性変形・弾性変形という概念はポピュラーだが,破壊的でなく,「回復力をもつ電気材料」というのは電気分野では新しい概念ではなかろうか.この試験に基づき,吸着力が弱めのプラスチック・シートを基板に使うことにより,電気的な屈曲耐性が実現すると期待できる.■・■3■加工機を使った精密印刷技術による銀ナノワイヤー・シートアンテナの作製■■■■■■市販のシートアンテナの形を模して,正確に銀ナノワイヤー分散液を塗布できるよう,■■加工機の改造を行った(図5).エンドミルを固定する部分に金属ノズルを固定し,シリンジポンプからテフロンチューブ経由で一定流量で送り,プラスチック・シート上にシートアンテナ形状に従って銀ナノワイヤー分散液を塗布した.シリンジポンプ図5■■加工機を改造した銀ナノワイヤー精密塗布装置■■・■銀ナノワイヤー・シートアンテナを使ったワイヤレス給電の実現可能性■■■■■■銀ナノワイヤーの電導性が向上したので,次段階の研究課題に挑戦した.具体的には,プラスチック・シートに塗布して作成した銀ナノワイヤー・シートアンテナがスマホのWi-Fiと同程度のマイクロ波周波数帯域でアンテナとして機能するかどうかを研究した(図6A).このアンテナは,ワイヤレス給電の受電アンテナをめざしたもので,皮膚に貼り付けて心拍数・血中酸素濃度を計測するセンサデバイスから電源電池を排し,軽量かつ屈曲耐性のあるシートアンテナに置き換えることを念頭に置いている.市販のRFIDタグの形状を模して,3D加工機を使った精密印刷技術によって屈曲性のあるプラスチック・シートに印刷塗布した複数の銀ナノワイヤー・シートアンテナの受信性能は,市販のRFIDタグの3倍から同程度の感度を有し(図6C),その実用性・有用性が証明された.図6Dは移動ステージ銀ナノワイヤー・シートアンテナが受信した920MHz搬送波(図6B)の変調信号であり,これはRFID送信機からRFIDタグへ送られているRFID番号の問合せコマンドに対応すると考えられる.この変調信号が受信できるなら,RFID用ICチップを銀ナノワイヤー・シートアンテナに追加するだけで,ICチップの機能としてワイヤレス給電の実現や,送信機とのデータのやり取りができると考えてよかろう.図6Aでは,まだ計測器との接続にSMAコネクタを使用しているため,アンテナとコネクタのはんだ付け部分に亀裂が生じやすく,この部分の屈曲耐性に問題がある.だが直流抵抗については,この銀ナノワイヤー・シートアンテナ自体は半径1mmの曲げにも耐えられる屈曲耐性を示していることを確認しており,大きな可能性がある.図6銀ナノワイヤーを塗布して作った■■■■用受信アンテナの受信性能試験■今後,本研究で開発した光溶接技術を活用して,高く,安定した電導性を示す銀ナノワイヤー堆積配線をマイクロ波通信に活用して行きたい.5Gから6Gへと,ワイヤレス無線技術への期待は高まっており,小電力デバイス用途でも小型シートアンテナを印刷技術で製造することは価値があろう.本研究で導入したラボ用マイクロ波オーブンは大きな効果があり,作製された銀ナノワイヤーは,従来法と比較して太さ・長さともそろい,スマートフォンのWi-Fiで使用される3GHz程度のマイクロ波周波数まで高い導電性を示した.マイクロ波周波数での長距離ワイヤレス給電応用をめざして,3D加工機を使って塗布・制作した銀ナノワイヤー・シートアンテナは市販品の銅箔受電アンテナよりも高い受信性能を示し,銀ナノワイヤー・シートアンテナがワイヤレス給電素子としての実用性をもつことが実証された.マイクロ波周波数での高い導電性には,(1)− 285 −
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