助成研究成果報告書Vol.35
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キーワード:レーザーピーニング,超高圧,偏光 1.研究の目的と背景 ピーニング処理は製品の付加価値化(製品長寿命化,ランニングコスト低減,高効率化,軽量化,耐環境性)を目的にし,部品レベルにおける疲労強度,耐応力腐食割れ特性,耐摩耗性の向上等のため材料表層に圧縮残留応力,加工硬化等を付与するものである.レーザーピーニングはレーザーで駆動する衝撃波によって金属表面近傍に圧縮残留応力層や硬化層を形成するもので,疲労強度や耐応力腐食割れ特性の向上に適用されている.■レーザーピーニングでは,照射する表面積に応じたパルスエネルギーを必要とし,大面積では大きなパルスエネルギーが必要である.一方,パルスエネルギーが大きいと繰り返し周波数は下がるため,利用率が下がる問題がある.また,パルス幅はナノ秒領域であるため,衝撃波を誘起すると同時に熱変性を引き起こすことが問題である.テーブルトップで安定かつ高繰り返し高出力でありながら,熱変性を防止するため,照射強度とレーザーパルス幅を最小化し,照射エネルギーを適切に制限した低エネルギーレーザーシステムが必要である.効果的にピーニングを実現する最適レーザー条件の探索では,一般に膨大なパラメータサーベイが必要であり,未だに最適化されていない.■ピーニング効果は,衝撃波が材料に圧力をかけることで得られる効果である.レーザーパルスは,高温高密度のプラズマを生成する役割を担い,高温高密度のプラズマが低密度側(真空や液中を含む)に膨張するときの反作用で固体側には圧力勾配がピストン役となって衝撃波が駆動される.したがって,衝撃波を制御するためには,レーザー生成プラズマの温度・密度の状態(状態方程式)と圧力勾配を誘起するプラズマ流体運動を最適化する必要がある.しかしながら,レーザーピーニングの研究は圧延効果・表面改質など照射後の状態を評価することに特化した研究が多いのが現状である.■本研究では,レーザーピーニング(局所的な衝撃作用を利用して,材料表面に圧縮残留応力を付与する技術)を用いて金属表面を改質する際,レーザーパルス幅と偏光ff電場■を制御する新しい手法により,低照射強度でありながら金属の降伏応力を超える超高圧衝撃波を材料表面に効果的に与え,かつ,周囲の熱変性を防止する.高繰り返しレーザーシステムを中核とする超高圧衝撃波装置を開発し,省エネ・熱変性フリーの次世代レーザーピーニングを宇都宮大学■工学部■基盤工学科■情報電子オプティクスコース■( ■■■年度■一般研究開発助成■■■■ ■■■ ■■■■ ) 教授■東口■武史■実現することを目的とする.■これまで筆者らが進めてきたレーザー生成プラズマに関する研究は,軟X線光源や高エネルギーイオン源を研究対象としてきた.高エネルギーイオンはプラズマが膨張するときの圧力勾配に起因しており,プラズマおよび固体物理(物性)に基づいて圧力勾配を正確に解析する流体シミュレーションコード開発を行ってきた.本研究では,これらのレーザー生成プラズマに関する知見をレーザー駆動衝撃波によるピーニングに適用し,物理的理解をベースとした研究アプローチにより,レーザー電場(偏光),レーザーエネルギー密度およびパルス幅を最適化する■■これにより,ピーニングを効果的に起こすことができるレーザー励起衝撃波の構造を理解するとともに,実加工最適条件解析法も確立でき,レーザーピーニング法に新しい技術と知見を供することができると考えている.そこで,レーザーのパルス幅と電場(偏光)を制御し,最適な衝撃波を駆動することで,熱変性のないピーニング効果を付与する.これにより,表面改質できる最適レーザー照射を行う省エネレーザーピーニングシステムを実現できると考えている.■本稿では,■1. 高繰り返しレーザーのパルス幅の制御■2. ベクトルビームの生成と偏光解析■3. 超高圧衝撃波の制御に向けた温度,密度,圧力の評価■について述べる.■■ 2.高繰り返しレーザーのパルス幅の制御  ・■■はじめに■衝撃波圧力に寄与するプラズマの吹き出し圧力はプラズマの温度と密度に依存する.温度はレーザーのパワー密度,密度はレーザーの波長に依存する.ここでは,レーザーの効率を考えて波長は1 mとし,パルス幅を変化させることでレーザーパルスのパワー密度が変化し,温度を変化させることで,衝撃波圧力を制御できる.そこで,パルス幅を300 fsから1 nsで変化させる.本研究を開始した段階で,80 fs 〜 10 ps領域のパルス幅を実現することができたため,本稿では約4 nsのパルス幅の高繰り返し高平均出力小型レーザーの開発について述べる.具体的には,繰り返し周波数が5 kHzのとき,68.8 Wの出力を達成し− 276 − 時間波形と偏光の最適化によるレーザーピーニング用 高繰り返し超高圧衝撃波の制御

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