2.電子ホログラムの高解像化 3.薄膜アブレーション加工条件の系統調査 える.そのため,本技術の高度化を図り,微細加工技術として確立することができれば,基礎科学はもとより将来の産業応用にも幅広い貢献が期待できる.これを達成するために本研究では,「レーザー干渉加工の高分解・高解像化」,「薄膜に対するアブレーション加工条件の系統的な調査」,「高NA対物レンズを使った微細穴あけ加工試験」に取り組んだ.その成果について,本論文において順に結果を示す.また,論文の最後において本研究のまとめと将来展望について述べる. 電子顕微鏡法の分野では,2010年代から電子渦と呼ばれる螺旋状の等位相面を有する電子ビームの研究が着目されるようになった5,6).電子渦は軌道角運動量を有するユニークな電子ビームであり,軌道-スピン角運動量間の相互作用を通じて,材料のもつキラル性や表面上のトポロジカルな構造を計測するプローブとして利用が期待されている.電子渦を発生するには,ビーム軸中央に位相特異点構造をもった,フォーク状の電子ホログラムを用いるのが一般的である.筆者らはこれまでに,厚さ35 nmのSi薄膜を用いて,軌道角運動量■■■1の電子渦を高効率で後,■■■2の高次電子渦を発生するホログラムの作製に作製した■■■1および■■■2のホログラムの様子と,直径8 µmの領域が照明されている.■■■2のホログラム発生可能な電子位相ホログラムの開発に成功した4).その取り組んだが,位相特異点を再現するためのホログラム中央のフォーク状構造を,解像度よく作製することができずに,電子渦の発生効率が著しく低下してしまった. これらのホログラムを使って電子顕微鏡内で発生した電子渦のビームプロファイルを,それぞれ図1に示す.透過電子顕微鏡(TEM)の明視野像において,ホログラム中央のでは,照明された領域の大部分で加工が施されていないのがわかる.これは,加工に用いたレーザー干渉縞が中央部分で不明瞭であったことが原因である.得られた電子回折像では,それぞれ主に3つのビームプロファイルが観測さ図 1.作製した■■■および■■■のフォーク状電子位相ホログラム.左から光学顕微鏡および走査電子顕微鏡による,ホログラムの表面観察の結果を示す.ホログラムの直径はともに約30 µmであった.TEM像とあるのは,ホログラムを電子渦発生用の透過電子顕微鏡にインストールし取得した明視野像.電子ビームはホログラムの中央の直径約8 µmの領域を照明している.電子回折像は同じ電子ビームの照射条件で取得した.この図中の赤破線上の電子強度分布を,ラインプロファイルとして一番右に示した. れた.中央のプロファイルは,入射電子ビームがそのまま透過したもの(0次回折)を示しており,その両側に■1および■2次の回折ビームが現れ,これが電子渦である.■2次の回折ビームは発生効率が低いうえに,プロアイル形状が歪んでおり,電子渦を発生するにあたってホログラムの性能が十分ではないことがわかる. ホログラムの性能を改善するためには,回折格子の間隔をより密にし,かつ中央部分まで分解能良くフォーク構造を形成する必要がある.そのために,加工に利用するレーザー干渉縞を明瞭かつ高解像化するための光学系の改良に取り組んだ.図2に構築した光学系の概念図を示す.まず,レーザー波長を第二高調波発生(SGH)によって,レーザー光源出力の1040 nmから520 nmに変換した.これにより,形成される干渉縞の間隔を半分にすることができる.次に,入射レーザーにホログラム波面を付与するのに使用する空間光変調器(SLM)面上において,レーザーのビーム直径を2 mmから10 mmに拡大した.これに合わせて,SLMから試料表面までの1枚の凸レンズと対物レンズとからなる縮小投影系の倍率を,1/75から1/250に変更した.これにより,試料表面上に形成される干渉縞パターンの解像度を向上することができる. 改良した光学系を用いて作成した■■■2のホログラムを,以前に作製したものと同じ縮尺で並べた様子を図3に示す.フォーク構造の中央部分の未加工領域が狙い通り減少していることが確認できる.また回折格子の間隔がおよそ半分になっている様子もわかる.このように,光学系の結像倍率やレーザー波長などのパラメータを最適化することで,より高品質な電子位相ホログラムを作製できることが確認できた. 前節の結果で達成されたホログラムの格子間隔は740 nmであった.これは入射レーザーの波長と2ビームの交差角度で決定する干渉縞間隔そのものであり,光学設計で決まる制約である.一方で,図3の結果を見ると格子間隔− 272 −
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