助成研究成果報告書Vol.35
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1.研究の目的と背景2.LIFT実験2・2結果図2に、照射後のターゲット基板表面の代表的なSEM画像を示す。様々な条件での実験を行っており3)、ここで示す結果は、繰り返し周波数424kHz、ステージの走査速度はいずれも80 mm/s、ドナーとターゲット基板間隔は1 µmである。また、レーザフルエンスは空間ピーク値で表している。図2(a)の通り、条件を適切に選択することで、線状転写が可能であることが確認でき、その線幅が概ね300 nm程度であることがわかった。一方で図2(b)に示すようにフルエンスを上げるとターゲット基板上に飛散した状態で付着している様子が見て取れる。これらより、フルエンスなどの条件を適切に設定することでビームシェイピングを施したパルスレーザ照射により回折限界を超える線幅の細線の転写が可能である事がわかった。実際には再加熱して溶融・凝固を行う場合に最終的に得られる線幅についても要検討と言える。また、同一条件下でもフルエンスを変えることで明らかに転写される細線の様子が異なる事がわかる。考えられる要因としては適切な溶融条件を作る事で微細な金属液滴が粒状にターゲット基板に転写される事が考えられ、さらにフルエンスを上げると大きなエンタルピー密度が液滴を飛散させる、あるいは一部で蒸発を伴う事で、噴霧状に飛散する事が考えられる。すなわち、フルエンス等の条件による薄膜の熱的な応答が支配要因と考えられる。キーワード:LIFT,転写実験,2温度モデル,高速度可視化LIFT (laser induced forward transfer、レーザ誘起前方転写)は狭義には80年代に提案1)された手法とされ、特に2010年代以降、急速に研究が拡大している。従来からの積層造形技術と異なりµmスケール程度以下のfeature sizeを目指す事が可能であるため、金属細線の描画を嚆矢としつつ、広く電子デバイス、プリンティッドエレクトロニクスや各種センサー、樹脂材料や生体材料への期待が広がっている。特にこの手法のメリットの一つが微細な構造の製作にあると考えたときには、使用するレーザ光の回折限界を超える加工線幅の実現が重要な課題である。一方でLIFTについてはここ10年程度で急速に基礎研究が立ち上がってきた段階でもあることから、ドナー薄膜の転写をもたらすレーザ照射後の金属薄膜の挙動が十分に理解されていない。特にこの現象を支配すると考えられる相変化を伴う薄膜の熱的な挙動については全くと言って良いほど研究事例が見当たらない。本研究では、特にこれらの点に焦点を置き、適切なビームシェイピングを施すことによる回折限界を超える加工線幅の実現の可能性を探るとともに、LIFTにおけるドナーたる金属薄膜の熱的な挙動について理論的・実験的な検討を行った。2・1実験装置の概要図1に、試験部の模式図2)を示す。光源は中心波長1035nmのフェムト秒レーザで、パルス幅は250 fs (FWHM)である。レーザ光ビームシェイピングについてはこれまでの研究成果も踏まえ様々検討を行った結果、回折限界以下の線幅を目指すためにBessel beamの高次lobeの影響を大きく低減できるAirybeamを用いることとした。照射光は図中のマスクでannular beamにした後に、対物レンズにより絞ることでAirybeamとする。得られたビーム直径は1.3µm (FWHM)となる。レーザ光の走査のため、ステージを走査する。実験で用いたドナー基板には厚さ100 nmの金薄膜をコートしたガラス基板を用いた。基板側からの照射により間隔をおいて設置したターゲット基板に金を転写する。東京工業大学工学院機械系(2018年度一般研究開発助成AF-2018219-B3)准教授伏信一慶targetFigure 2.5. Experimental setup図1試験部模式図Figure 2.6. Beam profile of Airy beam and Bessel beam− 252 −ビームシェイピングと熱流動挙動解明に基づく回折限界以下のLIFT金属細線パターニング

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