凝固速度差に起因すると考える.鋳造法では凝固速度が遅く,結晶粒が成長し酸素原子の偏析が生じる.一方,SLM法では超急冷凝固(103〜108K/s3))により酸素原子の濃化が抑えられ,図7(a-3)に示すように酸素原子が均一に分散する.これらの結果よりSLM材では,鋳造材のような数100 μmのスケールでの酸素の偏析・濃化領域は確認されず,酸素は素地全体に均一に固溶していると考える.図7.EPMA結果比較(a)Ti-2.0 mass%TiO2混合粉末を用いたSLM材と(b)0.96 mass%OTi鋳造まま材■・■酸素含有■■造形材の力学特性と強化機構の解析TiO2由来の酸素成分の固溶状態を調査すべく,最も酸素含有量が多いTi-2.0mass%TiO2(0.89 mass%O)混合粉末を用いたSLM材のEPMAを実施した.その結果を図7(a)に示す.(a-3)の酸素分布から確認できるように,SLM材の酸素原子は均一に分散していることを観察した.比較として,既往研究1)における0.96 mass%Oの高濃度酸素固溶Ti鋳造まま材のEPMA結果を図7(b)に示す.(b-1, 3)より,鋳造材は数100 μmの大きさの板状結晶粒から構成され,結晶粒内に酸素原子が濃化していることが報告されている.SLM材と鋳造材が同程度の酸素濃度であるにも関わらず結晶組織が大きく異なるのは,製造過程におけるTi造形材の酸素固溶量の変化が引張特性に与える影響を調査するため,SLMTi-c mass%TiO2(c = 0, 0.5, 1.0, 1.5, 2.0)に対して常温で引張試験を行った.得られた応力―歪み線図を図8(a)に,0.2%YS値,UTS値,破断伸び値の酸素含有量依存性を(b)にそれぞれ示す.TiO2粒子無添加材の0.2%YSは343 MPa,UTSは381 MPaであったが,TiO2添加量の増大に伴い引張強度は増加し,2.0mass%TiO2(0.89mass%O)では,それぞれ1075 MPa,1145 MPaと著しい強化を示した.また,破断伸び値に関して,1.0mass%TiO2(0.54mass%O)までは約20 %と高い値を示したが,2.0mass% TiO2(0.89mass%O)では5.6 %まで低下した.既往研究4)によると,酸素含有量が0.7 mass% O以上の鋳造材は塑性変形を示すことなく,脆弱破壊を生じることが報告されている.他方,酸素固溶Ti焼結押出材では,酸素含有量が0.93 mass%であっても固相焼結法により酸素が均一に分布したことで弾性域で破断することなく7.5 %の破断伸びが報告されている5).本研究で最も酸素含有量が多いTi-0.89 mass%O SLM材(TiO2添加量:2.0 mass%)でも破断伸び値は5.6 %であり,応力―歪み線図において塑性変形挙動を示した.これは,図7(a-3)に示したような巨視的領域での固溶酸素原子の均一分布によるものと考えられる.子の均一分布によるものと考えられる.図8.(a)酸素固溶Ti-SLM材の引張試験結果,(b)引張次に引張特性と組織学的知見を踏まえて,本試料における強化機構について考察する.金属の強化機構として,固溶強化,結晶粒微細化強化,析出強化,分散強化およびこれらの複合的強化が挙げられる.本研究で使用するTi造形材はすべてα単相合金であり,酸素も均一に分布していることから,酸素原子による固溶強化が作用すると考え,第二相や析出物および元素の不均一分布による影響は考慮しないこととする.加えて,酸素含有量の違いによって結晶組織が変化することから,結晶粒径の違いが強度に及ぼす影響についても考慮する必要がある.以上を踏まえて,本節では固溶強化理論の一つであるLabuschモデル6)による酸素固溶強化量とHall-Petchの経験則7,8)に基づく結晶粒微細化強化量を算出し,引張試験結果と比較することで酸素固溶SLM Ti材の強化機構を定量的に考察する.まず,SEM-EBSD解析結果よりTi-cmass%TiO2(c= 0, 0.5, 試験結果における酸素含有量の関係− 241 −
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