助成研究成果報告書Vol.35
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そこで,酸素原子がTi結晶中に固溶したことを検証すべく,XRD解析結果を用いてα-Ti結晶の格子定数の酸素添加量依存性を調査した.両者の関係を図5に示す.a軸長はほぼ一定だが,c軸長は酸素添加量の増加に伴いほぼ線形に増大した.酸素原子がα-Ti結晶中に侵入型固溶するとc軸方向に格子が伸長することから,添加したTiO2粒子がSLM過程で還元分解し,解離した酸素原子がα-Ti結晶中に固溶したと考える.図5.SLM材におけるα-Ti結晶のa軸,c軸方向の格子定数の酸素添加量依存性■・ 酸素含有■■造形材の結晶集合組織酸素固溶によるSLM材の結晶組織変化を明らかにすべく,SLM材に対してEBSD解析を行い,結晶組織とその配向性について調査した.TiO2粒子添加量の異なるSLM材Ti-cmass%TiO2(c= 0, 0.03, 0.5, 1.0, 1.5, 2.0)について,積層方向に観察したα-TiのIPF(Inverse Pole Figure)マップ,IQ(Image Quality)マップおよび{0001}面の極点図を図6に示す.全ての組成において,IPFマップ中の破線で示すように,積層方向に同一の結晶方位群を有する集合組織を確認した.この集合組織は,液相からの冷却過程で初相として析出するβ相に対応し,これがBurgersの方位関係にしたがってα相に相変態したものと考えられる.以後,この集合組織を旧β粒と称す.いずれの組成においても旧β粒は積層方向にエピタキシャル成長したことを確認した.次に,旧β粒内の結晶組織について調査した.(a) Ti-0 mass%TiO2および(b) 0.03 mass%TiO2のIPFマップおよび{0001}面の極点図より,積層方向と平行に{0001}面が向いた約100µmの結晶粒径を有する柱状α結晶粒の形成を確認した.一方,TiO2粒子の添加量を増やした(c)~(f)では,エピタキシャル成長を伴った旧β粒内に3.6 ~ 4.9 µmの結晶粒径を有する微細な針状結晶粒が形成した.ここで結晶粒径とは,針状結晶粒の面積を用いて等軸結晶粒に変換した際の直径に近似した値である.このようなTiO2粒子添加による結晶粒の著しい微細化挙動は,β相からの冷却過程でα+β二相共存領域を経由する際に生じるものと考えられる.酸素を多く含むTiでは,β単相域からの冷却過程でα+β二相領域を経て初晶α粒あるいはα’粒(マルテンサイト相)が生成する.さらに降温が進むと,残存したβ相の相変態によって2次α/α’粒が析出するが,これらが先に析出した初晶α/α’粒と接し,その粒成長が妨げられる結果,酸素含有量が増加することで結晶粒径が大幅に減少する.一方,TiO2粒子無添加材では,酸素固溶量が0.15 mass%と非常に少なく,α+β二相領域となる温度範囲が極めて小さいため,初晶α/α’粒はほとんど存在しないと考えられる.β単相領域から急冷したTi-0.94 mass%Oの固相焼結材においても微細化した針状α’粒が確認されている.また0.5 mass%TiO2では{0001}極点図から中心部,右斜め上から90°毎に4点の強いピークが確認できる.これらのピークは,視野内の旧β粒が互いに90°の角度を保ちつつエピタキシャル成長したことに対応する.1.0 mass%以上のTiO2粒子添加材でも同様に,90°に近い間隔のピークが確認でき,それぞれの旧β粒は一定の方位関係を有してエピタキシャル成長したことが示唆される.また,{0001}面の極点図中の最大集積強度(Imax値)は,Ti-0 mass%TiO2では約45であるのに対して0.03 mass%TiO2ではその約4/5,0.5 mass%TiO2ではその約1/3,さらに1.0 ~ 2.0 mass%TiO2では1/4 ~ 1/9程度に減少し,酸素量の増加とともに結晶配向性は低下した.これらの結果より,SLM材は旧β粒のエピタキシャル成長に起因する配向性を有し,また,酸素元素の添加により微細な針状α/α’結晶粒を形成することを示した.図6.TiO2粒子添加量の異なるTi-SLM材における結晶組織および配向性の解析結果(a)0mass%TiO2,(b)0.03mass%TiO2,(c)0.5mass%TiO2,(d)1.0mass%TiO2,(e)1.5mass%TiO2,(f)2.0mass%TiO2− 240 −

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