助成研究成果報告書Vol.35
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2.実験方法 要である. 結晶粒径が1 µm以下である超微細粒材は合金添加なしで強度と靭性を高くできるため資源循環材料として有望である7).超微細粒材は,結晶粒径が1 µm以上の粗大粒材とは変形挙動が異なることが知られている.粗大粒材では粒内の転位による変形が支配的であるのに対し,超微細粒材では粒界が占める割合が増加し,粒界の転位源が主に変形を支配するためだと考えられている8).一方,単結晶材については航空機のタービン翼にも使われ始め,今後用途の多様化する可能性も考えられる.粒界のない単結晶においては,転位は結晶粒界の影響を受けないため粗大粒材と変形メカニズムが異なる.したがって,粗大粒材に加えて今後加工の多様化が予想される単結晶材や超微細粒材も含めて包括的に応力緩和挙動を把握する必要がある. 転位運動に影響を与える因子のひとつに結晶粒径dが挙げられるため,粒界は応力緩和挙動に影響を与える因子のひとつと言える.引張過程における粒界の影響については,流動応力がd-1/2に対して線形的に増加するHall-Petch(H-P)則が広く知られている.従来はd ≥ 数十μmの範囲における粗大粒材で研究されていたが,近年ではd ≤ 1 μmの超微細粒材が開発され実験可能となった.超微細粒材は結晶粒内に対する粒界の割合が多いことから,粒界すべりの発現9)や流動応力がH-P則に沿わない10)など超微細粒特有の現象が報告されている.また,粒界のない単結晶に関しては引張方位によって加工硬化挙動が異なると報告されている11).一方,応力緩和挙動については単結晶から超微細粒の広い範囲における評価が行われていない. 図 3 各材料における材料内部の概略図 そこで,粒径が応力緩和挙動に与える影響を定量的に明らかにし,粒界が応力緩和挙動に影響を与えるメカニズムを解明することを目的とする.本研究では粒径の影響を評価するために,粒径と1対1の対応関係をもつ粒界面積SVをパラメータに用いて評価する.熱処理にて粒界面積を様々に振った粗大粒材に加え超微細粒材,単結晶材の引張試験片を用いて応力緩和試験を行う.本実験により,粒界が応力緩和現象に及ぼす影響を知ることができることに加えて,超微細粒材や単結晶材と極端な粒界面積における応力緩和挙動を包括的にとらえることができる.将来的には,これらの知見をFEMに組み込み,精度の高いシミュレーション活用による材料組織に適した加工実施の一助になると期待できる. 固溶原子や析出物の影響を排除するために純銅を供試材とした.図4に各実験試料の作製条件,試験片概略を示す. 単結晶材はBridgman法により作製されたものを用い,超微細粒材は2サイクルの繰り返し重ね接合圧延 11)により作製されたもの(ARB材)を用いた.粗大粒材は7つの条件 (300℃-25200s, 600℃-2400s, 5400s, 25200s, 800℃-2400s, 5400s, 2520 s) で熱処理を施した.これら9種類の試料について,応力緩和挙動を明らかにする目的で応力緩和試験を,試料のSVと粒内硬さHVを評価する目的で引張試験を行った.両試験は万能試験機を用いて行った.引張試験片はJIS-14B号(単結晶材,粗大粒材)とJIS-13B号(ARB材)を用い,単結晶材の引張方位は<100>とした.応力緩和試験はクロスヘッド速度2.82 mm∙s-1(ARB材は5.04 mm∙s-1)で公称ひずみ0.07(ARB材は0.015)まで引張り,その後100 s間ひずみを一定に保持し,荷重の時間変化を測定した.引張試験は応力緩和試験と同様のクロスヘッド速度で引張り,応力緩和試験の保持ひずみに達した時点で除荷した.また,SVとHVは引張試験後の試験片から取得した.SVは切断法にて測定し,HVはマイクロビッカース硬さ試験機で結晶粒内に圧痕を打ち取得した.ただし,ARB材はナノインデンテーションによりHVを取得した. 図4 各実験試料の作製条件,試験片概略 − 207 −

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