助成研究成果報告書Vol.35
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図3にSPS試料と押出し試料の相対密度の測定結果を示す。MAした粉末を用いてSPSでは350~500℃、熱間押出しでは350~450℃の温度範囲で高い相対密度を有する緻密な試料が得られた。さらに温度を上げるとSeの昇華によりSPS試料や押出し試料の密度が低下した。SPS試料と比較して押出し試料の500℃試料で密度が低下したのは押出し時に高温状態の時間がSPSより長く、Seの昇華が始まったためだと考えられる。そのため押出し温度を550℃まで上げるとさらにSeの昇華量が増えると判断し今回は500℃までの押出し成形を行った。図3SPS試料と押出し試料の相対密度図4にSPS試料と押出し試料の垂直断面と平行断面のXRDパターンを示す。SPS試料では垂直断面の(400)ピークが平行断面より強いことがわかった。これはSPSによって加圧方向と平行にa軸が配向していることによるものと考えられる。また、押出し試料では平行断面の(400)ピークが平行断面より強く、垂直断面の(020)ピークが平行断面より強い。よって押出し方向と垂直にa軸が、平行にb軸が配向していることになり、成形した試料に結晶異方性を付与できた。各断面のXRD測定結果からLotgering法8)により得られた(h00)、(0k0)、(00l)の配向因子をそれぞれa軸、b軸、c軸の配向因子として定量的に評価した。図5にSPS試料の平行断面および押出し試料の垂直断面から得られた配向因子を示す。図4のXRDパターンからは大きな結晶配向性が付与できたように見られるが、定量解析の結果、SPS試料の平行断面および押出し試料の垂直断面のb軸の配向因子は0.1以下であり、c軸はさらに小さい。SPS試料では焼結温度の上昇に伴いb軸の配向は低下しc軸の配向はほとんど変化していない。さらに、600℃焼結体では平行断面でもa軸の配向因子が正となっており結晶異方性が大きく低下していることがわかる。それに対して押出し試料ではわずかであるが押出し温度とともにb軸、c軸ともに上昇しており結晶配向性は向上している。押出しによるせん断変形が温度上昇により変形しやすくなったことを反映していると思われる。これらの結果から、500℃を越える高温、特に600℃では材料が軟化し、圧力の効果が小さくなったと考えられる。一方500℃までの温度では試料の軟化度が小さいため、SPS、押出しともに結晶配向値は上昇したと考えられる。SPSと押出しを比較すると、SPSのような圧縮圧力よりも押出しのようなせん断応力のほうがSnSeの結晶異方性を得るのには有効であったと考えられる。また、これらの面に垂直な断面であるSPS試料の垂直断面および押出し試料の平行断面から得られたa軸の配向因子は0.4近い値を示した。したがって、今回の実験条件において、SPS、熱間押出しはa軸の結晶配向性試料を作製するのには有効であるが、b、c軸の配向性試料を作製するには不十分であったと考えられる。図4SPS試料と押出し試料のXRDパターン図5結晶配向因子(a)SPS試料の垂直断面図6にSPS試料の反射電子像を示す。全ての組織は主に、黒色、灰色、白色の3つのコントラストから構成されている。黒色領域は空隙及び空孔に対応し、白色領域は母相に対応する。焼結温度が上昇すると結晶粒が大きくなり、600℃焼結試料では灰色の相が明確に観察され、分析の結果、Se-rich相であることが確認された。(b)押出し試料の平行断面(a)(b)− 202 −

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