助成研究成果報告書Vol.35
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1.研究の目的と背景2.実験方法Sn(99.9%、平均粒径38µm)、Se(99.9%、平均粒径10µm)粉末をSnSeの化学量論組成になるように秤量し、Ar雰囲気内にてMAによって合金化した。その後SPS装置で温度350~600℃の条件で焼結を行った。また、熱間押出しはMA粉末を圧粉後Alシースに真空封入してビレット化させ、押出し温度350~500℃の条件で熱間押出しを行った。得られた試料に対して最適な熱電特性が得られる焼結温度と押出し温度を調べるため、密度測定、X線回折、組織観察、ゼーベック係数、電気抵抗率、熱伝導率、ビッカース硬さの測定を行った。キーワード:熱電変換材料,熱間押出し,メカニカルアロイング一次エネルギーの多くは利用されておらず、未利用熱エネルギーとして廃棄されている。この未利用熱エネルギーの有効活用は、省エネルギーとCO2排出削減の重要な柱であり、特に、電力としての回収(廃熱発電)には高いニーズがある。そのため、熱エネルギーを電力に直接変換できる熱電変換技術には大きな期待が寄せられている。熱電変換材料の開発には、材料の性能を示す指針である熱電性能指数ZT=2T/()(:ゼーベック係数、:電気抵抗率、:熱伝導率、T:絶対温度)が1以上であることが求められている。これまでさまざまな熱電変換材料のZT値が報告されているがバルク材料の最大値は2014年にSnSe単結晶で報告されたZT=2.6である1)。しかし単結晶では製造コストや時間がかかるため、高い熱電性能を持つ多結晶のSnSeバルク材料が求められている。特にSnSeは特性異方性が強く、b軸、c軸方向で最大のZT値は2.6、2.3だがa軸方向では0.8に下がる。したがって異方性を反映させたバルク試料が必要である。我々は、組織の微細化によるフォノン熱伝導率低下と結晶配向化の観点から、メカニカルアロイング(MA)による微細粉末化合物の合成、この微細粉末を用いて放電プラズマ焼結(SPS)あるいは熱間押出し加工により合金粉末を緻密化させるプロセスを提案している2),3)。SPS法では応力を印加しながら試料の焼結を行うため応力軸に応じた結晶配向試料を得ることが可能であり、いくつかの報告がある4),5)。一方、熱間押出し加工ではせん断応力により結晶配向化を実現し、Bi2Te3系熱電材料で高性能化の実績がある2),3),6),7)。本研究では、試料の配向度に着目し、焼結温度や押出し温度がSnSe化合物の熱電性能と機械的性質に及ぼす影響を調べた。鳥取大学工学部機械物理系学科( ■■■年度一般研究開発助成■■■ ■■■■■■■■ )准教授音田哲彦3.結果および考察SnとSeに対してMAを行ったところ、30分でSnSeの合成が観察され、XRD測定からは4時間あまりでほぼ100%単一相が得られた。結晶子径はMA4時間試料で10nm以下になったがそれ以上行ってもわずかに小さくなるだけであった。さまざまなMA時間の試料について特性評価を行ったところMAを12時間以上行った試料において特性の再現性が得られたため、試料合成を12時間とした。図1に押出し試料の押出し圧力―ストローク曲線を示す。はじめに押出し圧力が徐々に増加し、ビレットが圧密される。ビレットが更に圧縮されるとダイスに材料が充填され、圧力が急激に上昇する。圧力の上昇が緩やかになっている辺りから押出しが始まる。押出し温度の上昇とともに押出し圧力のレベルが低下する傾向が見られた。これは押出し温度の上昇に伴いビレットの変形抵抗が減少したためだと考えられる。図2に500℃押出し試料の外観と断面を示す。Alシースの外観にはクラック等の目立った欠陥のない健全な試料が得られた。その他の押出し温度試料も外観は同様で健全な押出し試料が得られた。押出し試料の断面は外側をほぼ一定厚さのAlシースに囲まれており、内部にSnSeが存在している。試料直径は8mm程度であった。図1押出し圧力―ストローク曲線図2500℃押出し試料の外観と断面− 201 −8mmMA合成ナノ粉末を用いた熱間押出し高配向性SnSe熱電変換材料の開発

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