助成研究成果報告書Vol.35
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(左)TiNi相、(右)Nb相謝辞って、吸蔵された水素はすべて放出されたと言える。しかし、水素化前と比較すると、両相ともピーク半価幅が増加していることが観察され、水素化-脱水素化過程で合金内にひずみが蓄積したことが示唆される。脱水素化した試料のX線残留応力測定を行い、図9に示す回折リングを得た。回折強度の低下が見られたものの、明瞭な回折リングが得られた。しかし、両相ともリングの半価幅は1.5倍に増加し、合金内部にひずみが残存していると考えられる。cosα線図を作成して求めた残留応力値(応力偏差)は、TiNi相が-200MPa (28 MPa)、Nb相が-340MPa (39 MPa)であり、圧縮の残留応力が生じていた。両相に圧縮の残留応力が生じた原因については、考察がまだ不十分であるが、以下の2点が関係していると考えられる。図8圧延・熱処理したNb19Ti40Ni41合金の0.1MPa-図9圧延・熱処理したNb19Ti40Ni41合金を30%冷間圧延後に水素化-脱水素化後に得られた回折リング673KでのX線回折図形(1)TiNi相とNb相の膨張量差4.まとめ(1) Nb相とTiNi相からなるNb-TiNi合金のX線残留応力測定の結果、鋳造材および圧延材では両相がcube-on-cubeの関係を有するためランダム性が低く、残留応力の定量化水素化-脱水素化による体積膨張―収縮が弾性変形領域内で生じていれば、脱水素化後にひずみが生じることはないと考えられる。しかし、本合金のNb相はTiNi相に囲まれた状態で水素化により10%以上の体積膨張が生じるため、合金内で塑性変形も生じていると考えらえる。このような状況においても合金が破壊しないことから、水素吸蔵状態において両相には弾性および塑性のひずみが生じてNb相の体積膨張を緩和していると考えられる。その後脱水素化すると、Nb相は塑性変形を伴って収縮するが、水素吸蔵時に塑性変形が生じているため、脱水素化しても無応力状態に戻らないと考えられる。(2)合金表面と内部での膨張量差水素は合金表面で吸蔵され、合金内部へ拡散する。水素吸蔵が完了するまでに、合金表面で水素濃度が高く合金内部で水素濃度が低い、すなわち、合金表面でNb相の膨張量が大きく、合金内部で膨張量が小さい状態を経由することになる。逆に、脱水素化過程では、水素放出が完了するまでは、合金表面で収縮量が大きく、合金内部で収縮量が小さい状態を経由する。そのため、合金表面と内部での膨張量の差により塑性変形が生じたとか思われる。以上の様に、構成相の膨張率差、合金表面と内部での膨張率差により塑性変形が生じることで、水素化-脱水素化後にも応力が残留すると考えられる。は不可能であった。(2) 30%冷間圧延後に1373Kで熱処理したNb-TiNi合金では、両相の方位関係が崩れ、大傾角粒界が増加し、残留応力測定が可能となった。熱処理直後には、両相が無応力状態であることが解析で得ることができ、Nb-TiNi2相合金における精度の高い残留応力測定が可能となった。(3) 30%冷間圧延材では、明瞭な回折リングが得られず、残留応力測定は不可能であった。(4) 水素化-脱水素化後にTiNi相中には200MPa、Nb相中には340MPaの残留応力が生じていた。水素化-脱水素化過程で塑性変形が関与するためと考えられる。本研究は、公益財団法人天田財団の一般研究開発助成■■■ ■■■■■■■■ によって実施されました。また、金沢大学佐々木俊彦名誉教授、石川県工業試験場新谷正義氏、金沢大学大学院博士後期課程浜崎友貴氏に多大なる支援をいただきました。ここに厚く御礼申し上げます。− 199 −

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