■・■冷間圧延した合金中の残留応力測定これまでに、圧延・熱処理した合金では、実際に無応力状態にある合金の残留応力が「無応力」と解析できたことから、精度の高い測定を行うための試料作製条件、X線測定条件が見出されたと言える。そこで、圧延・熱処理合金を標準材料とし、30%冷間圧延した試料のX線回折測定を行った。図7にこの合金の回折リングを示す。Nb相から得られた回折リングは半価幅が増大し、合金内にひずみが生じていることが分かるが、回折強度が方位角により大きく異なったため、残留応力の定量化はできなかった。■・■水素化-脱水素化による残留応力の蓄積本合金を構成するNb相およびTiNi相は、ともに水素を吸蔵する相として知られている。ところが、Nb相はTiNi相の10倍以上の水素を吸蔵するため、水素化による膨張量差が大きくなる。その結果、外部応力なしでも水素化により大きな内部応力が発生する。その後真空引きすれば水素は容易に金属から放出される。しかし、水素化-脱水素化の過程では、弾性限を超える膨張差が生じても合金が破壊しないことから、合金内部で両相がひずみ、残留応力が生じていると考えられる。残留応力測定の前に、加熱-水素化-脱水素化-冷却サイクルにおける格子定数の変化をその場X線回折法により測定した。各段階でのX線回折図形を図8に示す。X線回折図形からは、構成相であるNb相、TiNi相の他に表面に被覆したPdのブラックピークが観察された。また、残留応力変化を防ぐ目的で、熱処理後に合金表面の研磨を行っていないため、Ni2Ti4OやNb2O5酸化物のピークも観察された。真空引き後に673Kに加熱してもNb相およびTiNi相の格子定数はほとんど変化しなかった。673Kで0.1MPaの水素を導入すると、Nb相のピークは大きく低角度側にシフトした。水素吸蔵により格子が膨張したためであり、その膨張量は約4%であった。一方、TiNi相のピーク位置は水素導入後もほとんど変化しなかった。従って、TiNi相は水素をほとんど吸蔵していないと考えられる。しかし、ピーク半価幅の増加が観察された。TiNi相内にひずみが蓄積したと考えられる。本合金が水素化しても破壊しないことから、合金内部でTiNi相がNb相の膨張の影響を受け、残留応力が作用していると考えられる。その後、673Kで1時間真空引きすると、両相のブラックピークは水素化前の位置に戻った。従図7圧延・熱処理したNb19Ti40Ni41合金を30%冷間圧延した後にNb相から得られた回折リングを図5に示す。TINi相、Nb相ともに明瞭かつ強度が方位角に依存しない回折リングが観察された。図6に示したcosα線図を見ると、全方位角にて直線性の良いプロットを得ることができた。解析の結果、TiNi相およびNb相に生じる残留応力σ(偏差Δσ)は、それぞれ-8MPa (21 MPa)、-18MPa (11 MPa)であり、両相ともほぼ無応力状態にあることが明らかになった。以上より、両相のcube-on-cubeの方位関係を有している場合は残留応力の測定は困難であるが、圧延・熱処理により大傾角相境界を形成させると精度よく残留応力を測定できることが分かった。図430%冷間圧延後に1373Kで1時間熱処理した図5圧延後に1373Kで1時間熱処理したNb19Ti40Ni41合金から得られたデバイリング(左)TiNi相、(右)Nb相図6圧延後に1373Kで1時間熱処理したNb19Ti40Ni41合金から得られたTiNi相とNb相のcosα線図Nb19Ti40Ni41合金の鋳造組織− 198 −
元のページ ../index.html#200