助成研究成果報告書Vol.35
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3.結果■・■鋳造合金の微細組織と残留応力測定本合金は2相からなるため、各相の融点および熱膨張係数に差があるため、鋳造材には残留応力が蓄積されていると考えられる。そのため、X線残留応力測定前に残留応力を除去するために923Kで1時間の熱処理を行った。熱処理後の合金のSEM写真を図1に示す。白色のNb相と黒色のTiNi相が層状組織を形成していることが分かる。両相の層間距離は200-300nmであり、非常に細かい組織を形成している。この合金に表2の条件でX線を照射して得られたTiNi相およびNb相の回折リングを図2に示す。TiNi相から得られた回折リングを見ると、方位角によって回折強度のばらつきが観察された。図3にTiNi相のcosα線図を示す。この図の傾きから残留応力が算出できる。最小二乗法にてデータを整理した結果、TiNi相中の残留応力σ(標準偏差Δσ)は、+16MPa(33 MPa)であった。偏差は多少大きいものの、TiNi相はほぼ無応力状態と考えられる。一方、図2(右)に示した様に、Nb相からは明瞭な回折リングは得られず、cosα線図も方位角により大きくばらつくことが分かった。このデータに最小二乗法を適用することはできず、残留応力の算出は不可能であった。様々な条件で測定を行ったが、2相中に生じた残留応力を同時に測定することは不可能であった。鋳造材では数十μmの共晶ドメイン内において、Nb相とTiNi相の方位関係が揃ったcube-on-cubedの関係を有している4)。また、前述のように両相は同じ結晶構造を有している。そのため、結晶粒径が数十μmの粗大粒を有する材料を測定したときと同様に、回折に寄与する結晶粒が少なくランダム性が低いと考えられる。表2■■■α法による残留応力測定条件図1Nb19Ti40Ni41合金の鋳造組織■・ 熱処理により粒状化させた合金の残留応力測定層状組織を有する状態での測定が困難なため、熱処理により微細組織を変化させて測定を試みた。鋳造材を石英管に真空封入し、1373Kで1時間の熱処理を行ったところ、共晶組織は消失し、TiNi相中にNb相が粒状に析出した組織に変化した。しかし、組織変化後もスポッティな回折リングしか得られず、残留応力の解析は不可能であった。熱処理により組織を粒状に変化させても、1つの共晶ドメイン内ではNb相とTiNi相がcube-on-cubeの関係を有しているため4)、回折に寄与する結晶の方位が十分ランダムではないためと考えられる。本合金を冷間圧延した後に熱処理すると、共晶組織から粒状組織に変化するとともに、両相がcube-on-cubeの関係が崩れ、様々な方位関係を持つようになることが報告されている4)。本合金を30%冷間圧延した後に1373Kで1時間熱処理した後の微細組織を図4に示す。圧延のみを行った合金と同様に、Nb相がTiNi相中に析出した組織に変化した。Nb相の粒径は1μm以下であり、非常に微細な組織を形成していた。EBSD測定の結果、この合金中では、両相がcube-on-cubeの方位関係を示す割合は20%以下であり、80%は方位差が15°以上の大傾角相境界を形成していることが明らかになっている5)。この合金の回折リング図2Nb19Ti40Ni41鋳造合金から得られたデバイリング図3Nb19Ti40Ni41鋳造合金から得られたTiNi相とNb(左)TiNi相、(右)Nb相相のcosα線図− 197 −

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