キーワード:■■合金,複相合金,組織制御,水素化物,■線回折,■■■α法■ 1.研究の目的と背景 Nb相とTiNi相は、異なる降伏応力、加工硬化率、破断応力、破断ひずみを示す。機械的性質が異なる相からなるNb-TiNi2相合金を圧延した場合に、どちらの相がどのように変形するか、一方の相が変形した場合に他相との間に水素社会を実現するには、安価な純水素を低コストで大量に製造する必要がある。現在、パラジウム(Pd)基水素透過合金を用いて水素を分離・精製しているが、パラジウムは10,000円/gを超える貴金属なため工業的に使用することは不可能である。そのため、Pdの10倍の水素透過性能を持ち安価なニオブ(Nb)が注目されたが、Nbは水素を多量に吸蔵して破壊するため、水素分離・精製膜として使用できなかった。申請者らは、水素透過性は低いものの耐水素脆化性に優れた相として、形状記憶合金として知られるTiNi相に着目した。bcc構造のNb相と規則化したbcc構造のTiNi相が共存したNb-TiNi合金でPdと同等の水素透過度と耐水素脆化性を両立させることに成功した1)。 どのような残留応力が生じるかは不明である。また、圧延の限界を支配する因子も分かっていない。また本合金は水素を固溶した状態で使用されるが、水素化によりNb相はTiNi相の10倍以上体積が膨張する。このように2相合金内で一方の相が大きく膨張した場合、各相にどのような応力やひずみが生じるかには興味が持たれる。さらに、本合金を水素化・脱水素化サイクルを行うことで、合金内に蓄積される残留応力やひずみが水素透過合金の寿命に大きな影響を与えることが知られている。以上より、Nb-TiNi2相合金の圧延および水素化に伴う残留応力を定量的に理解することは、学術的にも工業的にも重要な課題である。 合金中の残留応力は、X線回折を利用して測定することができる。近年、測定時間の短縮、装置の小型化が可能なcosα法が残留応力測定法の1つとして注目されており、現場での測定が可能になっている2)。cosα法を本Nb-TiNi合金に適用できれば、圧延法による薄膜化工程中に試料に蓄積されるひずみや応力を定量的に評価し、効率的な冷間圧延が可能となる。さらに、水素化‐脱水素化に伴うひずみや残留応力の蓄積挙動を理解できれば、本合金の長寿命化に関する知見も得られると考えられる。本研究では、cosα法を複相Nb-TiNi合金に適用するための実験条件を明らかにし、圧延、水素化‐脱水素化により生じる残留応力を定量的に明らかにすることを目的とする。 金沢大学■理工研究域■機械工学系■( ■■■年度■一般研究開発助成■■■■ ■■■■■■■■ ) 教授■石川■和宏■2.実験方法 ・■■試料作製■アルゴン雰囲気中アーク溶解によりNb19Ti40Ni41 (mol%)合金インゴットを作製し、放電加工機により板状試料を切り出した。合金表面をエメリー紙と0.06 μmアルミナ懸濁液を用いて研磨した。ロール圧延機にて試料を所定の圧延率まで冷間圧延し、必要に応じて1373 Kで1時間の熱処理を行った。試料の微細組織観察を走査型電子顕微鏡(SEM)にて、相同定をX線回折装置(XRD)にて行った。水素化する試料については、水素の解離促進と酸化防止を目的として、スパッタ装置により558 Kで約30 nmのPdを被覆した。Pd被覆後の試料をステンレスチャンバーに装填して真空状態で673 Kまで加熱した後、0.1 MPaの水素を導入して20分間水素化した。その後、チャンバー内を真空引きし、1時間の脱水素化を行った。 ・ ■残留応力測定■本研究で残留応力測定の対象となる2相の構造や弾性定数を表1に示す。Nb相、TiNi相ともに体心立方構造(bcc)を有するが、TiNi相ではTiとNiが規則配列している。両者の格子定数はそれぞれ0.330 nm、0.301 nmであり、10%程Nb相が大きい。また、X線的弾性係数はそれぞれ51.8 GPa、82.4 GPaである3)。 上記2相からなるNb-TiNi合金に対して、本研究ではcosα法によりX線残留応力測定を行った。X線残留応力測定にはcosα法を適用した。X線応力測定装置はµ-x360(パルステック社製)を使用した。TiNi相とNb相はどちらもCu-Kα線を用いて回折環を取得し、X線応力値の算出には、TiNi相では321回折面を、Nb相では411及び330回折面を用いた。なお、回折環を取得するとき、平面揺動法を用いて30 mm2の試料表面の矩形領域にX線を照射した。詳細な測定条件を表2に示す。 表1■■■相および■■■■相の構造、弾性係数■− 196 −■■■■■■■複相合金の圧延および水素化により生じる■残留応力の■線回折法による定量化■
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