図16はガス流量を41 L/minとしてAD法で作製したTiN膜を対象にスクラッチ試験より得られた荷重に対するAE及び摩擦係数の変化を示す.AEの発生が顕著に見られ始めたLcAEが14.7 Nとなった箇所において膜にき裂が確認された.また,摩擦係数が急激に変化した時の荷重であるLcFtは65.6 Nであり,この荷重を示した箇所では基材であるSKH51の露出が見られた.表1はガス流量を20, 33, 41 L/minとしてAD法により作製したAl2O3膜,ガス流量を10, 15, 20L/minとしてAD法により作製したTiN膜およびAIP法により作製したTiN膜においてスクラッチ試験を実施した時のLcAEおよびLcFtの値をまとめたものである.AIP法により作製した膜では,LcAE= 48.1 Nの負荷で膜の破壊が開始するのに対して,AD法で作製したAl2O3膜では25.5N ~28.8N の負荷にて膜の破壊が開始し,AD法で作製したTiN膜では8.2 N ~ 14.7N の負荷にて膜の破壊が開始した.これよりAD法で作製した膜は,AIP法で作製した膜よりも1/2~ 1/6程度の低い荷重で膜の破壊が生じることが分かった.一方,AIP法により作製した膜では,LcAE=60.2Nの負荷で摩擦係数が急激に大きくなり基材が露出するのに対して,AD法で作製したAl2O3膜では31.6N ~ 58.9N の負荷にて摩擦係数が急激に大きくなり基材が露出する.一方,AD法で作製したTiN膜では62.0N ~ 81.5N の負荷にて摩擦係数が急激に大きくなり基材が露出する.AD法により作製したTiN膜の方が高い荷重まで基材を露出することなく,膜を維持できるおよび1100HVであり,AIP法により作製した膜よりも35~40 %程度低い値であった.また,AIP法により作製したTiN膜でのヤング率や硬さはその値に大きなばらつきは見られず,誤差は小さかったが,AD法により作製した膜は,TiN膜およびAl2O3膜にかかわらず,比較的大きなばらつきが見られた.りは硬さが大きくなると報告されている.しかしながら,結晶粒径が小さすぎると硬さが小さくなるという,逆ホールペッチの関係がTiNにおいて見出されており7),おおむね,10数nm以下において生じることが報告されているこAD法により作製した膜においてヤング率がAIP法により作製した膜よりも低かったのは,膜組織中に微細なボイドが成膜時に形成したためと考えている.AD法により作製したTiN膜に1200℃にて10時間程度の熱処理を真空中にて施すと,ヤング率はAIP法によって作製したTiN膜と同等の300 GPaを示した.また,AD法により作製した膜においてビッカース硬さがAIP法により作製した膜よりも低かったのは,AD法により作製した膜の結晶粒径が10 nmオーダーであったためと考えている.一般に結晶粒径が小さいほどホールペッチの関係により降伏応力,つまとから,同様のことが生じていると考えられる.AD法により作製したTiN膜へ熱処理を施すことで,結晶粒径は20~30 nmとなったためAIP法により作製した膜と同等の硬さが得られたと考えられる.− 194 −
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