助成研究成果報告書Vol.35
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1.研究の目的と背景キーワード:エアロゾルデポジション,セラミックス膜,結晶配向工具鋼により形成される金型の表面における力学特性や耐磨耗性向上のため,化学気相析出(CVD)法やアークイオンプレーティング(AIP)法,ホローカソード(HCD)法などにより硬質材料である-Al2O3やTiNの成膜がなされている.-Al2O3の(0001)結晶面が基板面に平行となる結晶配向膜では,無配向なAl2O3膜の約2.2倍の耐摩耗性が見出されている1).また,耐磨耗性が期待される高いヤング率や硬さは,TiNの(002)面が基板面に平行な膜では(111)面が平行となるよりも2倍程度高く,結晶配向制御は膜特性の向上に重要と考えられている.しかしながら,成膜温度は約1000℃と金型基板への影響は大きく,低温化が求められている.さらに,使用時には金型に負荷が加わり,金型と材料との間には摩擦が生じることから,硬質膜の一部脱落が起こり得る.CVD法やAIP法,HCD法では成膜の手法上,金型全体を成膜するため,脱落した箇所のみを狙って成膜することは難しい.均一な膜の金型上への再度の形成には,健全な箇所をマスキングするか,健全な膜をも全て除去した後に,再成膜するかが求められる.また,再成膜にあたり再び約1000℃の加熱が求められるため,成膜の低温化が求められる.常温にて緻密かつ結晶質なセラミックスを成膜できるエアロゾルデポジション(AD)法では結晶配向しないと考えられていた粒状の-Al2O3粒子を用いてAD法にて成膜後に熱処理を施すと,(0001)結晶面が基板面に対して平行にランダムレベルの約25倍と高配向な集合組織となることを著者は見出した2).また,成膜したままでも(0001)面が基板面に15°程度傾いた集合組織が形成されることを明らかにした.AD法は狙った箇所のみの成膜が可能であるため,金型上の脱落した硬質膜の補修は可能と考えられるが,補修した箇所の硬質膜が金型硬質膜として利用可能な力学特性を示すかは,明らかではない.また,従来から硬質膜として利用されておりAl2O3より融点が高く塑性変形し難いと考えられるTiNにおいてAl2O3と同様に成膜が可能か,また,集合組織が形成されるか,望まれる力学特性が得られるかについて,知見は得られていない.本研究は,Al2O3およびTiNを対象に粒子の衝突により結晶配向の可能性を実験的に検討するとともに,従来材よりも高い力学特性を示す膜を作製することを試みた.横浜国立大学大学院工学研究院システムの創生部門( ■■■年度一般研究開発助成■■■ ■■■■■■■■ )教授長谷川誠2.実験方法 ・■材料および膜の作製原料粉末として,Al2O3(AES-12,住友化学(株)製)およびTiN(TiN-01, 日本新金属(株)製)を用いた.また,粉末のメジアン径(D50)はそれぞれ0.5 mおよび1.2mであった.粉末形状は,若干角ばっているものの,ほぼ等軸であった.いずれの粉末も#60のふるいにかけ,粉末の大きな凝集体を取り除いた後,250℃にて20時間乾燥させて使用した.成膜には,厚さ3mmのSKH51およびMo基板を用いた.緻密かつ結晶質な膜の形成が可能であるAD法による成膜は,図1に示す成膜装置を用いて行った(Type GD-AE04/SS2, 淵田ナノ技研).装置はエアロゾルチャンバーと成膜チャンバーの2室より構成され,原料粉末をエアロゾルチャンバーに導入し,基材は成膜チャンバー内に設置する.真空排気の後,エアロゾルチャンバーにキャリアガスを流入させてエアロゾルを発生させ,同時に成膜チャンバーとエアロゾルチャンバーの圧力差により,ノズルを通してエアロゾル化した原料粉末を基材へ送り成膜する.Al2O3およびTiNの成膜は,基板温度を25℃~300℃,キャリアガスはN2,ガス流量は6~ 42L/minの条件で実施した.成膜に用いた他のパラメーターとしては,「ノズルからのガス流と基材表面とのなす角度(ノズル角度)」,「走− 190 −金型硬質膜の補修を念頭に入れた粒子の常温衝突による高結晶配向性セラミックス硬質膜の創生

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