助成研究成果報告書Vol.35
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表2 冷間圧延鋼板のr値 r(DIC法) r(引張試験) 図8 DIC法によるひずみ解析結果(図中の値はεl) 0° 45° 90° 表2には,引張試験とDIC法から求めたr値を比較した.各引張方向に対するr値はどちらの結果もほぼ同じ値をが観察されたことを考えると,特に厚さ方向の残留応力の大きさと厚さの変化に関係性があることが推察される. 図7 穴広げ試験後の穴縁からの距離に対するγとα相の残留応力((a) 0°,(b) 45°) 3・3 DIC法を利用した冷間圧延鋼板のr値測定 図8にひずみ10%を加えた試験片表面の光学顕微鏡写真とDICによるひずみ分布解析結果を示す.(図は白黒なのでわかりにくいが)フェライト単一組織であっても,場所によってひずみの大きさが異なることがわかった.例えば,引張方向のひずみの場合,与えたひずみが10%に対して,最大ひずみは13 %,最小値は7.6 %と,5 %近い差が見られた.また,ひずみの値が大きな場所は,すべり帯や粒界付近が多く,ひずみの小さかった領域は微細な結晶粒が多いことなどがわかった.図8のひずみ解析結果からは,任意の場所におけるひずみ量を示すことができる.よって,解析結果からランダムに選んだ30点以上のひずみ量を平均して,引張方向(εl)と幅方向(εw)のひずみを算出し,以下の式を用いてr値を求めた. 引張方向 示したことから,DIC法はr値の算出においても有効であることがわかった.引張試験片に与えるひずみ量が10 %以上になると,表面の凹凸が激しくなることで,ひずみ解析が困難になる4).よって,今回のようなひずみ10 %を加えた試験片のr値解析にはDIC法は利用可能だと言える. 4.まとめ 本研究では,0.2C鋼より作製したTRIP鋼を用いて,機械的特性の異方性を調査し,穴広げ試験を行った.これらは,構成相の変形挙動とγの加工誘起変態挙動の観点より考察を行った.得られた主な結論は,以下の通りである. 1) 機械的特性の異方性を調査した結果,45°方向の伸びとr値が他よりも小さい値を示した.これは加工誘起変態によるα'体積率が影響していることがわかった. 2) 0.2C TRIP鋼の穴広げ率は37%であり,穴縁周辺以外では加工誘起変態していないことがわかった.γとαの残留応力を計算したところ,厚さ方向の残留応力の大きさと厚さの変化に関係性があることが示された. 3) ひずみ10%を加えた冷間圧延鋼板の光学顕微鏡写真を用いて,DIC法によりr値を求めた.得られた結果は,引張試験から求めたr値と一致した.DIC法では,変形した組織とひずみ量の関係を把握できる利点があり,r値の解析方法として有効であることがわかった. 本研究は公益財団法人天田財団の2018年度一般研究開発助成(AF-2018031-B3)を受けて行ったものである.ここに記して深甚なる謝意を表す. 鉄と鋼,100 (2014), 1238. 謝 辞 参考文献 1) K. Hasegawa, K. Kawamura, T. Urabe and Y. Hosoya: ISIJ Int., 44 (2004), 603. 2) 鈴木裕士:表面と真空,53 (2010), 713. 3) N. Tsuchida and S. Harjo: Metals, 11 (2021), 2053. 4) 中田伸生・西山真郷・古賀紀光・土山聡宏・高木節雄:5) S. Harjo, N. Tsuchida, J. Abe and W. Gong: Sci. Rep., 7 (2017), 15149. 6) H.N. Han and D.-W. Suh: Acta Mater. 51 (2003), 4907. 7) T. Yamashita, S. Morooka, S. Harjo, T. Kawasaki, N. Koga, O. Umezawa: Scripta Mater., 117 (2020), 6. 8) 船川義正:特殊鋼,66-3 (2017), 9. 9) X. Chena, H. Jianga, Z. Cuia, C. Liana, C. Lu: Proc. Eng., 81 (2014), 718. 10) C. Chiriac and D.P. Hoydick: AIST Conference Proceedings, (2013), 55. 11) B.M. Hance and T.M. Link: IOP Conf. Ser.: Mater. Sci. Eng. 651 (2019), 012061. 12) P. Larour, J. Freudenthaler, M. Kerschbaum, D. Dolzer: IOP Conf. Ser.: Mater. Sci. Eng. 967 (2020), 012080 r = εw / − ( εw + εl ) (2) 1.61 1.17 1.65 1.66 1.12 1.66 − 160 −

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