助成研究成果報告書Vol.35
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r値値 表1 機械的特性の異方性 0° 45° 90° 図2に,その場中性子回折実験で得られた,圧延方向に0, 45°方向から引っ張った時のα,γ,α'相の相ひずみを示す.図3には,この時の真ひずみに対するα'体積率(加工誘起変態挙動)を整理した.相ひずみはα',γ,α相の順に大きく,α'の相ひずみに引張方向による違いが見られた.また,図3の加工誘起変態挙動も引張方向による違いが明確であり,ひずみ15%までは90°方向のα'体積率が多く,45°方向は最もα'体積率が少なかった.表1に示したr値の異方性をα'体積率から考えると,r値を求めたひずみ15%でのα'体積率は0, 90°方向はほぼ同じであったのに対して,45°方向のα'体積率は少ないことがわかった.よって,r値の大きさにα'体積率が影響していると考えられ,γからα'への加工誘起変態量が多いほど優れたr値が得られると推察される. 図1 中性子回折実験の説明:(a) r値測定後の試験片を用いた実験,(b) 穴広げ試験後の試験片を用いた実験 図2 引張変形中のその場中性子回折実験で得られた,真ひずみに対するα,γ,α'相の相ひずみ((a) 0°,(b) 45°). 同一視野の光顕写真と,DIC法解析用ソフトウェア用いて,引張方向と幅方向のひずみを解析した.各方向のひずみは,任意に選んだ30点以上の平均値を用いることで,r値を算出した. 3.結果と考察 3・1 引張変形とr値の異方性 表1に,引張試験で得られた機械的特性を示す.引張強さが約800 MPaの高強度鋼板であり,機械的特性の異方性は小さく,強度差は約20 MPa,伸びの差は2~3 %であった.また,r値は45°方向の値が最も小さく,0, 90°方向はほぼ同じ値を示した.各方向のr値より求めた板厚異方性は0.826,面内異方性は0.254であった. 幅方向と厚さ方向について各相の残留相ひずみを算出した.さらに,穴広げ試験後の試験片についても実験を行った.ここでは,図1 (b)に示すように,穴広げ試験後の試験片を用いて,試験片の穴縁から圧延方向に対して0, 45, 90°方向に中性子線を当て,各場所におけるプロファイルを測定した.試験片の一番端のデータを変形前として扱うことで,各相の残留応力やα'体積率を計算した.ここでも圧延方向に対する軸方向,幅方向と厚さ方向についてのデータを解析した. 2・3 DIC法によるひずみ解析とr値測定 r値をミクロ観察結果から測定するため,DIC(Digital Image Correlation;デジタル画像相関法)法4)を用いた.DIC法とは,物体表面に描かれた変形前後のランダムパターンをデジタル画像として取得し,これを比較することで観察箇所の各所における変位やひずみを測定する手法である.本実験では,まず単一の組織からなる単相材にて実施することが好ましいと考え,市販の冷間圧延鋼板を用いた.2・1と同じく圧延方向に対して0, 45, 90°方向に引張試験片を作製し,試験片表面を機械研磨,バフ研磨後にナイタールでエッチングし,圧痕を打った.この圧痕を目印とし,引張試験前とひずみ10%を加えた後に除荷した状態について,同じ箇所を光学顕微鏡で撮影した.引張変形前後のYS TS U.El (%) 24.7 22.6 24.0 (MPa) 762 751 740 (a) r値測定試料 (b) 穴広げ試験 (MPa) 411 453 420 T.El (%) 32.7 30.0 32.6 0.946 0.699 0.959 YS: 降伏強さ, TS: 引張強さ, U.El: 均一伸び, T.El: 全伸び − 158 −

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