助成研究成果報告書Vol.35
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1. 研究の目的と背景 (2018年度 一般研究開発助成 AF-2018027-B3) 大阪工業大学 機械工学科 教授 羽賀 俊雄 3. 実験方法 Al-Mg合金としてAC7Aを使用した.AC7Aは鋳造用合金であるが,塑性加工に使用される5182と成分が近く,インゴットでの購入が可能なためである.AC7Aの成分を表1に示す. 約3㎏のAC7Aを黒鉛るつぼと電気炉を使用して大気中で溶解した.るつぼを高速双ロールキャスターに移動し,るつぼから樋を介して高速双ロールキャスターの下ロール面上に注湯した. 高速双ロール鋳造・インライン熱間圧延のモデル実験の模式図を図1に示す.高速双ロール鋳造で作製した板を搬送用のころの上に引き出し,約200mmに切断しインライン圧延用の試験片とした.試験片の温度を測定し,所定の温度で熱間圧延を行った. 高速双ロールキャスターとして縦型高速双ロールキャスターと異径双ロールキャスターを提案し,特性を調査してきた.本研究では,搬送が容易である異径双ロールキャスターを使用した.図1に示す異径双ロールキャスターでは,上下のロール径はそれぞれ300mmと1000mm,幅は100mmとした.ロール材質は高速双ロールキャスティングを可能にするために熱伝導率が大きく冷却能が高い銅とした.従来のAl合金用双ロールキャスターのロール材質は,熱間加工用の工具鋼である.従来の双ロールキャスターでは,Al合金板のロールへ固着を防ぐために,黒鉛系の離型剤をロール面に噴霧する.銅ロールを使用すると,ロール面温度が固着温度まで上昇せず固着が起こらないので,離型剤は使用しなかった.離型剤は,溶湯とロール間の熱抵抗になるため,使用しない方が,高速ロールキャスティングに有利になる.異径双ロールキャスターは内製した. 圧延機は,DBR70(大東製作所製)を使用した.鋳造板の全幅を圧延することは,モーター出力が足りず不可能であった.そこでロール形状を凸型とし,凸部の幅(圧延する幅)を20 mmとし,鋳造板の中央を圧延した.従来のアキーワード:Al-Mg合金板,高速双ロールキャスター,インライン熱間圧延 現在,DC鋳造・熱間圧延・冷間圧がAl合金板を作製する方法の主流である.Al-Mg合金板は成形性が高く,自動車のインナーパネルなどに使用されている.Al-Mg合金は,DC鋳造時に鋳造割れを発生し易い.Al-Mg合金は硬いため,耳割れを発生し易く歩留が低い.双ロールキャスターは,溶湯から直接薄板が作製可能であるためDC鋳造と熱間圧延の設備が不要となる.したがって製品の低コスト化が可能になる.DC鋳造時の鋳造割れへの対応も必要ない.しかし,双ロールキャスターにも欠点がある.それは,板の鋳造速度が遅い,Al-Mg板では表面には割れが 発生し易い,中心線偏析が発生しAl-Mg合金では著しい,である.申請者らはAl合金の高速双ロールキャスターを提案し,従来のAl合金用双ロールキャスターの30倍以上の鋳造速度を達成した.しかし,表面割れや中心線偏析は改善できなかった.そこで,インライン熱間圧延により表面割れや中心線偏析を改善することを検討した.インライン熱間圧延の可否,表面割れに対する熱間圧延温度と圧下率の影響などを調査した. 2. 双ロールキャスターとインライン熱間圧延 従来の双ロールキャスターと高速双ロールキャスターでインライン熱間圧延を行う場合を比較した.従来のAl合金用双ロールキャスターでDC鋳造と同じ生産量を得るためには複数台の双ロールキャスターと熱間圧延機が必要となる.また,熱間圧延機の圧延速度を考慮すると,双ロールキャスターで鋳造したAl合金板の複数のコイルを加熱し熱間圧延を行う方法も考えられる.熱間圧延機に必要とする費用は少なくなる.しかし,再加熱した板を熱間圧延したものとインライン熱間圧延したものが,表面割れや中心線偏析に対する改善効果が同じであるか,疑問である.少なくとも,表面割れは,表面の酸化が進み,圧着し難くなると考えられる.加熱炉も必要である.これに対し,高速双ロールキャスターであれば,必要な熱間圧延機は1台であり,加熱用の炉も必要ない.インライン熱間圧延は,設備費用を考慮すると,高速双ロールキャスターにおいてその有効性は高いと考えられる. − 142 −安価で内部欠陥が無い高成形能Al-Mg板の作製が可能な 「高速双ロールキャスター・インライン圧延法」の開発 Mg 4.83 表1 AC7Aの成分(mass%) Mn Si 0.10 0.47 Fe 0.12 Zn 0.01 Al Bal.

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