キーワード:航空機チタン合金,鍛造加工,動的球状化,動的再結晶,計算科学,機械学習 1.研究の目的と背景 取り扱う合金はTi-6Al-2Sn-4Zr-6Mo(Ti-6246)合金で,本合金はNearβ型のTi合金で汎用なTi-6Al-4V合金と比較して耐クリープ特性に優れ,航空機エンジン用の中圧圧縮機ディスクに実用化されている.本研究ではこのTi-6246合金について鍛造・組織変化の構成モデルの基盤を実験および数値解析技術の両面から構築する. 2.実験方法 棒状形状のTi-6Al-2Sn-4Zr-6Mo(Ti-6246)合金をアーク溶解で製造して,その後に均質化熱処理を施し,Φ5㎜の円形になるように切削加工した棒材試料を準備した.出発組織として本研究では,ラメラ組織,Bimodal組織および(α+β)等軸組織を呈す供試材を準備した.等軸形態を呈す試料を供試材として,ラメラ組織,Bimodal組織もしくは等軸組織はこの供試材に対して適切に加工-熱処理を施して,それぞれの組織を準備した.本研究で使用したこれらの試料の出発組織を図1に示す.このように組織形態が大きく異なる3つの試料を準備して圧縮試験に供した. その後にこれらのTi-6246合金を供試材(試験片:φ5mm×h7.5mm)に対して,鍛造試験(750℃~1050℃,10-4s-1~1s-1)を行った.ここで圧縮率は50%で,高さが3.25㎜まで加工を実施し,加工後に試験片は油中にて冷却した.組織はSEM,SEM-EBSDおよびTEMにより評価し,β粒の動的再結晶挙動,β粒径の変化,およびラメラα相の動的球状化の現象論を定量的に評価・解析した.これらの実験結果(鍛造過程の塑性流動特性および組織変化)を基に物理構成式(塑性構成式,および動的再結晶および動的球状化において修正JMAK (Johnson-Mehl-Avrami-Kolmogorov)則)を構築する.更には得られた実験データセットから,データ科学の概念から多様な機械学習のアルゴリズム(階層型クラスタリング(Ward法),ニューラルネットワーク)から組織変化機構のクラスタリング・回帰を行い2),加工条件(加工温度,ひずみ速度,相当ひずみ量)の組織変化に及ぼす影響を定量的に評価・解析した.また,ここで構築した構成モデル(JMAK)および最適化した機械学習のアルゴリズムを汎用の有限要素解析(FEM)コード(DEFORM-3D,V10.2)にユーザサブルーチンで導入して,鍛造解析と形成される組織予測(β相の動的再結晶挙動およびα相の動的球状化機構)航空機産業は中型機を中心にこの20年で倍以上の生産量が見込まれており,一方で資源枯渇問題,CO2排出の環境問題に伴いエネルギー利用効率の向上が強く要望され,輸送機器等での革新的な軽量・高強度・耐熱材料の開発と実機適用が強く要望されている1).最新の航空機に使用される材料ではCFRP(炭素繊維複合材量)とともに金属ではチタン(Ti)合金の需要が著しく増加している.これはCFRPとの相性の良さ(化学反応性)が理由だけでなく,上記した軽量・高強度・高耐熱性に強く貢献できるためである.Ti合金部材の殆どは鍛造加工,圧延加工,プレス加工(超塑性加工)により部品形状に成形される.その際,使用用途に応じて最適な組織形態(例えば等軸形態,ラメラ形態,もしくはbi-modal形態)を形成するために適切な加工条件(熱間温度・加工速度・ひずみ量)・熱処理条件で塑性加工される.航空機エンジン内の動翼を支えるディスク材,ブレード材は大型鍛造部材であり,エンジンの安全・安定動作のために最も重要な部品であり,軽量かつ高強度なTi合金が多く使用される.ここで,上記した最適な組織形成を実現する事を念頭に置きながらも,鍛造は加工での安全性を重視して(加工荷重の低減,塑性安定な条件の選定),高温・低速化での鍛造加工により部品成型される.つまり“加工し易さ”を重視した経験則により製造条件が選定されているのが実状である. 航空機Ti合金鍛造において経験則に依存しない最適な組織制御・材質制御を実現する鍛造プロセス設計を大きな目標として,本研究では航空機エンジン用Ti合金の高温変形挙動(流動特性)および組織変化機構を実験的に評価して,以下に記述する構成モデルから塑性変形特性および組織変化機構の構成モデルを構築する.これを有限要素解析(FEM)に展開(サブルーチンで導入)して,高精度な塑性加工モデル・組織予測モデルの基盤を構築する.更にはデジタルツインの概念からも,鍛造・組織データ(実験)のデータセットから多様な機械学習アルゴリズムを援用して,鍛造加工条件と組織変化(本研究では特にβ相の動的再結晶およびα相の動的球状化の組織変化機構に着眼)の関係性を実験的・定量的また構成モデルの構築の観点から作用機構を解明する事を目的とする. ( ■■■年度■一般研究開発助成■■■■ ■■■■ ■■■■)■香川大学■創造工学部■教授■松本■洋明■− 136 − 航空機エンジン用■■■■ ■■合金の革新的な鍛造プロセス・組織制御を実現するための組織予測モデルの基盤構築■■-実験・計算の両面から-■
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