助成研究成果報告書Vol.35
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キーワード:摩擦攪拌接合,薄鋼板,突合せ点接合 PS C0.04■.研究の目的と背景■摩擦攪拌接合(FSW: Friction Stir Welding)は,ツールと呼ばれる棒状の工具を高速回転させ,ツールを母材に押し付けたときの摩擦を利用して母材同士を一体化させる接合技術である1).FSWは固相接合であり,最高到達温度が融点に達しないため,接合部の強度低下を溶融溶接と比較して抑えられる事や,熱による変形が小さいなど様々な特長があり,自動車産業を中心に,ツールを横方向に移動させずにスポット溶接を行う摩擦攪拌点接合(FSSW: Friction Stir Spot Welding)の適用も進んでいる. これらのFSWが適用された製品のほとんどはアルミニウム合金であり,研究対象としても,アルミニウム合金を中心に,マグネシウム合金や銅合金などの接合が報告されている.また,炭素鋼やステンレス鋼等の鉄鋼材料系でも機械特性や接合組織の報告がされており,FSWの適応可能範囲は広がっている.しかし,鉄鋼材料は比較的強度が高く,ツールの摩耗・欠損が発生しやすいなどの理由から,アルミニウム合金などと比較すると報告は少ない.これに対して,ツール材質を高温強度,耐摩耗性が高いPCBNツールを用いる研究や,板厚が1mmを下回る薄板に関してはプローブレスツールを用いる研究が進められている. しかし,板厚が1mmを下回る薄板におけるFSW,FSSWは,ツールの回転などにより材料自体が変形してしまうなどの困難がある.また,FSWにおいてツール挿入量は接合品質に大きく影響しており,薄板においてはより高い精度が求められるため接合報告は少なく,突合せでの接合例は板厚0.5mmが最小となっている.これを下回る板厚に対しての接合方法は確立されておらず,FSWが実用できる板厚の最小は1mm程度が限界となっている.板厚が0.1mm程度の薄板に対する接合は,主にレーザー溶接が用いられるが,コスト面で課題があり,付加価値の高い製品への用途に限定されている.そこで,板厚0.1mmのFSWが確立されれば,比較的安価に導入ができるため,電子部品,精密部品などにも適用することができ,FSWの応用範囲を広げることができると考えられる. 本研究では,FSWの適用範囲拡大を目的に,板厚0.1mmのSUS304薄板材の突合せ接合において,線接合の前段階として突合せFSSWの適用方法の検討し,薄板における接合方法の確立ならびに適正接合条件範囲の調査や接( ■■■年度■一般研究開発助成■■■■ ■■■■■■■■ )■香川大学■創造工学部■准教授■吉村■英徳■ .実験方法■ ■■■供試材■本研究では,FSWの適用範囲拡大のため,電子部品や微小構造物への適用を想定し,板厚0.1mmのオーステナイト系ステンレス(SUS304)を供試材として用いた.その化学成分と機械特性をTable 1に示す.また,供試材の表面は2B仕上げである. 合部の評価を行った.  ■■ ■ツール形状■ツール形状をFig. 1に示す.一般的なFSWツールはプローブと呼ばれる凸部を持っており,プローブを材料内に挿入し接合を行う.しかし,板厚がt=0.1 mm程度の場合,ツール先端のプローブ部の加工が困難となる.そこで,球頭ツールの適用を試みた.攪拌によるツール先端周辺の材料の盛上がりを抑制するショルダー部の役割を果たすため,ツール端部にR15 mmの球頭部を設け,その先端に攪拌部として直径Φ1.5 mmのフラット部を設けた.ここで,先端まで完全な球頭形状ではなく,先端にフラット部を設けたのは,ツール軸方向の接触荷重設定の安定化,およびツール先端の加工精度が理由である.下記2.3節においては,旋盤と拡大顕微鏡による研磨にてツール端部を加工していたが,表面粗さや先端に残ったバリによって初期位置合わせに再現不足が生じていた.したがって,最終的にはNCフライス盤を使用し,ツールの外縁から直径線に平行にエンドミルを移動して加工した.これにより,フラット部の直径および表面粗さのツールごとの誤差は抑制できた.フラット部の平均表面粗さはRa 0.11 μmである.球頭部のRに関して,入熱量の向上や被加工材を抑える目的で更に大きなRも検討しHardness(HV)Si0.53Mn1.000.036TensileStrength(Mpa)Yield Stress(Mpa)152746Ni8.26Cr18.190.001Elongation(%)27173Table 1■■Chemical composition and mechanical properties of SUS304 sheet used in this study − 125 −■■■■■薄板オーステナイト系ステンレス鋼の■突合せ摩擦攪拌点接合法の開発■

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