助成研究成果報告書Vol.35
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4.まとめ )aPM(力応称公図7 条件A(圧下率50%)および条件Bの試料の公 表2 条件A(圧下率50%)の加工熱処理を施した試料と条件Bの熱処理を施した試料の残留γ体積率と残留γ炭素濃度 (mass%) (vol%) 3・5 引張特性 図7に条件A(圧下率50%)の加工熱処理を施した試料と条件Bの熱処理を施した試料の公称応力-公称ひずみ線図を示す.条件A試料の降伏応力(0.2%耐力)は830MPaとなり,条件Bでは980MPaとなった.加工熱処理を施すことによって降伏応力は150 MPa程度低下した.一方で,引張強さは条件Aと条件Bともに1150 MPa程度となった.これらより,条件Aの降伏比が条件Bよりも低くなったことから,条件Aの加工熱処理を施した試料はプレス成形に有意な特性を有していることが分かった. 謝 辞 参考文献 1200 1000 800 600 400 200 0 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 率の増加が,前述3・1のビッカース硬さの減少を招いたと考えられる.一方で,条件Aの残留γ炭素濃度は1.13 mass%となり,条件Bの残留γ炭素濃度よりもわずかに低くなった.これらの結果は,前述3・3の微細残留γに起因しており,加工熱処理によって微細な残留γが増加する一方で,オーステンパー処理時に残留γに濃化する炭素が分散されたために,残留γ炭素濃度がわずかに減少したと考えられる.ただし,一般的に1.0 mass%を超える炭素濃度を有する残留γは,変形に対して十分な安定性を有していることから,本研究によって得られた残留γも十分な安定性を有している. 試料 条件A (圧下率50%) 条件B 称応力-公称ひずみ線図. 一様伸びは条件Aが28%,条件Bでは12%となり,加工熱処理により一様伸びが著しく増加した.条件Aの引張強さと全伸びのバランスは38.3 GPa・%,条件Bでは21.1 GPa・%となり,条件Bに比べ条件Aの強度・延性バランスが15 GPa%以上高くなった.熱間圧延とオーステン公称ひずみ(-) 残留γ体積率 残留γ炭素濃度 24.7 1.13 16.6 1.30 条件A 条件B パー処理を組み合わせた加工熱処理を施し作製したTBF鋼板は高い強度・延性バランスを有した. 加工熱処理により作製したTBF鋼板の高い引張特性は,熱間圧延とその後のオーステンパー処理によって得られた微細なベイニティックフェライト組織と微細かつ均一に分散された残留γの体積率増加に起因していると考えられる.条件Bの様に熱処理のみで作製したTBF鋼板の残留γは形状にバラツキがあり,引張変形時に不均一に加工誘起マルテンサイト変態が生じる(とくに,粗大な残留γから加工誘起マルテンサイト変態が生じる)と考えられる.一方で,条件Aでは微細かつ均一に鋼中に残留γが分散されることで,引張変形時に均一な加工誘起マルテンサイト変態が生じ,高い一様伸びが得られた. 引張変形中の残留γの加工誘起変態状況や加工熱処理により得られた残留γの結晶方位と引張変形挙動との関係については検討中である.また,同加工熱処理条件で作製したTBF鋼板の穴広げ特性と張出特性を評価するための成形試験を現在実施中である.得られた結果は各学協会の講演大会および論文にて公表予定である. 低合金TRIP鋼板の製造において,オーステンパー処理前に熱間圧延を施すことにより,微細なベイニティックフェライト母相組織と微細かつ均一に分散された準安定残留γを有するTRIP型ベイニティックフェライト鋼板が得られた.この加工熱処理TBF鋼板は1150MPa程度の引張強さと30%程度の全伸びを有する高強度・高延性な加工熱処理鋼板であることが分かった. 本研究は,公益財団法人天田財団の一般研究開発助成(AF-2018014-B2)の支援により実施した研究に基づいている.ここに記して深甚なる謝意を表します.また,本研究を実施するにあたりご指導いただいた東北大学金属材料研究所 北條智彦先生,実験遂行に多大なご協力をいただいた茨城大学大学院理工学研究科学生 木村太一さん,工藤瞬さん,小島元太さんに厚く御礼申し上げます. 1) 杉本公一・小林純也・北條智彦:鉄と鋼,103(2017),1-11. 2) K. Sugimoto・J. Kobayashi・Y. Nakajima: Mater. Sci. Forum, 783-786 (2013), 1015-1020. 3) J. Kobayashi・H. Sawayama・N. Kakefuda・G. Itoh・S. Kuramoto・T. Hojo: Mater. Sci. Forum, 1016 (2021), 732-737. 4) 木村太一・工藤瞬・小林純也・倉本繁・伊藤吾朗・北條智彦:CAMP-ISIJ,35(2022),288. 5) 工藤瞬・木村太一・小林純也・倉本繁・伊藤吾朗・北條智彦:CAMP-ISIJ,35(2022),204. − 124 −

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