図4および図5より,本研究の加工熱処理による供試材の微細組織変化は図6のようになると考えられる.まずγ域加熱時に供試材の組織がγ単相になり(図6(a)),その状態から熱間圧延が施される(図6(b)).このとき,加熱され等軸粒となった旧γ粒は圧延によりパンケーキ状になり粒内に変形帯が導入されると考えられる(断定はでき 図5 (a,b)条件A(圧下率50%)の加工熱処理を施 した試料と(c,d)条件Bの熱処理を施した試料のSEM-EBSD像.(a)および(c)はImage Quality(IQ) マップを,(b)および(d)はPhaseマップを示す. 図5(a)および図5(b)より,条件Aの加工熱処理を施した試料のベイニティックフェライト組織は,図4の結果同様に,条件Bの組織よりも微細化されていた.また,条件Aの試料ではIQ値の低い微細な組織が存在しており,微細なベイニティックフェライト組織は圧延による塑性加工の影響を受けていると考えられる.図5(b)および図5(d)のPhaseマップを見ると,条件Bでは比較的粗大な残留γがパケット境界に点在し,微細な残留γはベイニティックフェライトブロック境界に残存していた.それに対し,条件Aでは微細な残留γが試料全体に均一に分散されている状態であることが分かった.条件Aの試料の残留γの存在位置は,組織の境界が不明瞭ではあるが,パケット境界やベイニティックフェライトブロック間で 図6 条件Aの加工熱処理工程中における組織変化の 3・4 残留オーステナイト体積率と炭素濃度 表3に条件A(圧下率50%)の加工熱処理を施した試料と条件Bの熱処理を施した試料の残留γ体積率および残留γ炭素濃度を示す.これらの数値はX線回折装置を用いて評価しており,測定に用いた各試験片は加工熱処理/熱処理のまま試料を用いている.表3から,加工熱処理を施した条件Aの残留γ体積率は24.7 vol%となり,条件Bに比べ残留γ体積率が5割程度増加した.この残留γ体積 γ 旧γ粒界 圧延方向 変形帯 残留γ (a) (c) ST L ベイニティックフェライトと残留γの相分率や相分布状態等を詳細に調査するためEBSD解析を実施した.その結果を図5に示す. あると考えられ,より詳細な検討は透過型電子顕微鏡を用(b) (d) 20 μm いての観察が必要である. ないが,再結晶も生じると考えられる).その後,オーステンパー処理を施すことで,圧延の影響を受け微細になった加工γ粒内に微細ベイニティックフェライトが形成され,パケット境界やベイニティックフェライトブロック間に残留γが残留する.母相組織が微細になったことで,オーステンパー処理時の未変態γも領域が狭まり,最終的に微細残留γが残存する状態となった. 模式図. (a)γ域加熱時 (b) 熱間圧延時 加工後γ粒界 γ (c) オーステンパー処理後 ベイニティックフェライト − 123 −
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