度温 A3 MS 室温 図1 加工熱処理線図.条件A:熱間圧延と恒温保持処理 キーワード:低合金TRIP鋼,加工熱処理,残留オーステナイト,ベイニティックフェライト,引張特性 2・2 ビッカース硬さ試験 圧延した各試料の硬さをビッカース硬さ試験で評価し表1 供試材の化学組成(mass%) Al 2・3 微細組織観察 微細組織観察には走査型電子顕微鏡(SEM,S-3400N,HITACHI)を用いた.各熱処理後の試料から観察用試験片を採取し,その試験片を樹脂埋めした後に湿式研磨(#80,#400,#800,#1500,#2000)を行った.その後にバフ研磨機で鏡面仕上げを施し,表面にナイタール(5%硝酸+エタノール)腐食を施し観察した.観察面は板厚断面(L-ST面)を主として観察した.また,SEM(SU5000,HITACHI)-後方散乱電子回折(EBSD)解析により,加工熱処理を施した試料の組織解析を行った. 2・1 試料および加工熱処理方法 本研究では表1に示す化学組成を有する供試材(マルテンサイト変態温度Ms: 346ºC,板厚2.5 mm,熱間圧延まま材)を用いた.この供試材に図1に示す加工熱処理を施した.まず,供試材から短冊状に加工採取した圧延用試料を塩浴内でγ域950ºCで1800 s間加熱した.その後塩浴炉から取り出した直後に圧延機で各圧下率40~90%で1パスでの圧延を施した.この圧延の際,圧延ローラーはガスバーナーで30分以上加熱している.圧延後の試料を直ちに400ºCの塩浴炉に入れ,1000 s間の恒温保持を施した.この圧延と恒温保持処理による加工熱処理工程を以降は1.研究の目的と背景 条件Aと呼ぶことにする.また,比較材として熱間圧延実施せずに400ºCで1000 s間の恒温保持のみを施した従来のTBF鋼も作製した.この熱間圧延を施さない熱処理のみの工程を条件Bと呼ぶことにする. (黒線+赤線),条件B:熱処理のみ(黒線) た.熱処理後の試料からビッカース硬さ試験片を採取し,圧延板面(L-LT面)を湿式研磨した後,ビッカース硬さ試験機(AVK-C1)を用いて荷重98N,保持時間10 sの条件のもと硬さ試験を行った.なお,硬さ値は7回の平均値とした. 2050年のカーボンニュートラル実現に向け,輸送機器の構造部材や各種部品に用いられる先進高強度鋼(Advanced High Strength Steel; AHSS)に関する研究が盛んに行われている.鉄鋼材料の高強度化にはマルテンサイ茨城大学 工学部 機械システム工学科 (2018年度 一般研究開発助成 AF-2018014-B2) 講師 小林 純也 ト化強化や予加工を施すことによる転位強化等が多く利用されている.それらAHSSの中でも,残留オーステナイト(γ)の変態誘起塑性による高強度・高延性を有する低合金TRIP鋼は次世代自動車用高強度鋼板として注目されている.これまでに杉本らは,鋼の母相組織をベイニティックフェライトとしたTRIP型ベイニティックフェライト鋼(TBF鋼)や,母相をマルテンサイトとしたTRIP型マルテンサイト鋼(TM鋼)を開発し,種々の研究報告を行ってきた1).これら研究において,熱間圧延あるいは冷間圧延まま材をγ域加熱後にオーステンパー処理(恒温保持)を施し低合金TRIP鋼が作製されてきた.近年になり杉本らは,その残留γ量の増加と残留γを母相に微細分散化させることを目的として,製造過程への熱間鍛造の導入した結果を報告している2).これは低合金TRIP鋼製造過程において,オーステンパー処理前の塑性加工が低合金TRIP鋼の機械的特性向上に有効であることを示している. 本研究では,低合金TRIP鋼板の機械的特性向上を目的として,残留γ量増加や微細分散化のための加工熱処理方法に熱間圧延を選択し,加工熱処理を施した低合金TRIP鋼の引張特性と微細組織を調査した.本報告では,オーステンパー処理前に熱間圧延を施した加工熱処理TBF鋼板の種々の結果を報告する3-5). 2.実験方法 C 0.40 Nb Mo 0.05 0.20 Si Mn 1.5 1.5 950℃×1800 s 400℃×1000 s 熱間圧延 圧下率=40~90% 塩浴中 塩浴中 油冷 時間 Fe <0.005 Bal. − 121 −熱間圧延とオーステンパー処理による 低合金TRIP鋼の高強度高延性化
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