表1に,血管壁とプラークの材料物性値を示す.血管壁とプラークは非圧縮性の超弾性体であるとし,5パラメー①②③④挿入バルーン回収1.研究の目的と背景2.ステントの種類3.バルーン拡張ステントの最適設計キーワード:ステント,最適化,有限要素法近年,若年層での心筋梗塞や脳梗塞の発症の増加や平均寿命の延びにより,ステントの長期使用を考慮する必要性から,血管へのダメージの少ないステントが望まれている.このようなステントを開発するためには,ステントの拡張量および表面性状の制御,複雑に屈曲した血管への留置のための柔軟性への対応,脈動によりステントと血管壁へ作用する圧力変動の影響,材料の粘性変形に起因する血管内でのステント拡張量の減少などを考慮する必要がある.さらに,患者個々の血管形状を十分考慮した設計製造システムが必要となる.本研究での目的は以下の 点に集約できる.(1)冠動脈に関して:患者個々の冠動脈形状を■■画像から抽出しそれに基づいたステント形状を最適化手法により設計する.さらに設計した複雑な形状を持つステントを金属焼結3Dプリンターにより製造するシステムの構築を行う.(2)大動脈解離に関して:大動脈解離に使用されるステントグラフトの変形特性を有限要素解析により明らかにする.ステントグラフトに使用される数種類の形状記憶合金に対する,ステントグラフトの特性,特に,血管に与える影響を明確にする.さらに,実際にステントグラフトが血管内で拡張する様子を把握するための実験プラットフォームを開発する.ステントは主にバルーン拡張ステントと自己拡張ステントの二つに分類される.バルーン拡張ステントは冠動脈,自己拡張ステントは頸動脈や大動脈の疾患に用いられる場合が多い.図1にバルーン拡張ステントと自己拡張ステントの概略図を示す.図1ff■■はバルーン拡張ステントである.網目管状のステントが,カテーテルにより患部に挿入されたのち,ステント内側のバルーンが拡張しステントを広げステントが塑性変形することにより,狭窄部分が広がり血流を確保する.図1ff■■は自己拡張ステントであり,細いパイプ(シース)内に窄めて挿入された形状記憶合金製の網目状のステントをカテーテルで患部に挿入し,シースからステントを抜き出すことにより,ステントの弾性回復により拡張し狭窄部を押し広げ血流を確保する.本研究では冠動脈用のバルーン拡張ステントと大動脈用の自己拡張ステントについて検討した.3・1最適化の概要バルーン拡張ステントの形状最適化には,最も自由度の北海道大学大学院工学研究院機械・宇宙航空工学部門( ■■■年度一般研究開発助成■■■ ■■■■■■)教授佐々木克彦高い方法であるトポロジー最適化を用いた■■.トポロジー最適化とは,設計領域内の材料分布を変化させ,形状変更だけでなく,穴の数などの形態変更も変化させることで,剛性を保った上で構造物を軽くする手法である.トポロジー最適化は,軽量・高剛性構造設計問題,構造物の固有振動数に関する最適設計問題,ヒートシンクなどの熱力学に関する構造設計問題,翼や流路などの流体力学に関する構造設計問題,アンテナやモータなどの電磁気学に関する構造設計問題など ■様々な問題に適用されている.なお,トポロジー最適化及び構造解析は汎用有限要素解析ソフトANSYS19.1を用いて行った.3・2境界条件および最適形状プラークの形状,特性を考慮したステント形状の最適化を行うため,血管とプラークを模した円筒に薄板を押し当て,薄板上の数点で相当応力を測定した.各点ごとの相当応力の比を測定点に加える荷重の比として利用し,トポロジー最適化を行った.図2(a)に血管およびプラークを模した円筒の形状を示す.血管は本来三層構造であるが,本研究では簡便のため一層の均一な材料と仮定した.血管は,内角90°,厚さ1.2 mm,内腔の直径3 mm,長さ5 mmである.プラークは最も厚い部分の厚さを0.4 mm,長さを5 mmとし,血管とプラークの長さは等しいと仮定した.なお,この場合のプラークの狭窄率は26.7 % である.(a)バルーン拡張ステント(b)自己拡張ステント図1ステントの種類動脈狭窄部(プラーク)カテーテルステントガイドワイヤー狭窄部デリバリーシステムバルーン(a)挿入(b)拡張(c)留置アウターシースステントインナーシース− 115 −塑性変形の局所化を考慮した最適設計によるカスタムメードステントの開発
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