助成研究成果報告書Vol.35
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8.ソリトンクリスタルの実現 9.まとめ 謝■辞■これまで得られた結果より,共振器で必要なQ値の条件を緩和しつつモードロックレーザの条件を得るためには,共振器サイズをある程度大きくしなくてはならないことが示唆された.すなわち,我々は共振器をGHzの繰り返し程度になるサイズを選択しつつ,さらなる高繰り返し化を目指す必要がある. そこで有望な技術となるのが,ソリトン結晶の生成である.ソリトン結晶とは,リング共振器の中に空間的に(時間的に)等間隔な光パルスが生成された状態のことを指す.我々はこのソリトン結晶生成の物理について解明を試みた7). 図14■(a)ソリトン結晶を生成するための系.可飽和吸収体を付与した微小光共振器を用いて実現する.(b) 可飽和吸収を用いてソリトン結晶を実現する説明図.(c) 計算されたソリトン結晶.超高繰り返し光パルスが得られている. 今回想定している系を図14(a)に示す.ソリトン結晶を生成するためには,等間隔な光パルスを多数共振器の中に生成する必要がある.そのために,我々は図12でも用いた可飽和吸収技術を活用することとした.微小光共振器において光周波数コムを生成する際は,図7(b)で示したように,Turing patternコムと呼ばれる状態からスタートする.Turing patternコムは時間領域では正弦波変調となっているので,そのピークと谷の間隔は完全に等間隔である.通常はそこからカオス状態を経由してソリトン状態へと達するが,可飽和吸収を付与することで,カオス状態に陥るのを妨げる事ができる.カオス状態を経由せずにTuring patternコムから直接ソリトンコムの状態へと遷移させることで,等間隔なソリトンパルスを共振器に得ることができる.以上の説明を図示したのが図13(b)であり,これがすなわちソリトン結晶を得るためのアイディとなる. 非線形シュレディンガー方程式を用いて,図13(a)のシステムを計算機上で実現し,その応答を計算したのが図13(c)である.ソリトン結晶が実現でき,等間隔な超高繰り返し光パルスが得られていることが示された.この手法によるソリトン結晶生成は従来にはない,全く新しいものである. 以上の成果は,利得が比較的高く得られる少しサイズが大きな微小光共振器を用いても,超高繰り返し光パルスが得られることを示しており,高繰り返しパルス光源の実現手法の多様化を進めるものである. 本研究における主な成果をまとめると,MgF2微小光共振器の作製において超精密機械加工を組み合わせることで,従来は広い透過スペクトルを有するMgF2では実現できなかった,分散設計された高Q値微小光共振器を作製することに成功した.そして,MgF2微小光共振器を用いて,10 GHzでの繰り返し光パルスを光周波数コムで実現した. また,自励発振に向けてCNTを付与したErドープシリカトロイド微小光共振器の検討を進め,世界最小級のErドープCWレーザを実現するとともに,超高繰り返しモードロックレーザ実現に向けた条件を明らかにした. 超高繰り返し光パルスの実現によって,レーザ加工機のスループット向上や,アブレーション冷却などの新たな物理現象の解明に貢献できると期待される. 本研究を進めるに当たり,多くの関係者の方々に感謝申し上げます.特に超精密加工において柿沼康弘教授(慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科)には重ねて感謝申し上げます.研究室のメンバー,特に藤井瞬博士(現理化学研究所)には実験や理論の多くの部分を進めていただきました.ここに御礼申し上げます.■ − 109 −

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