図3:MgF2結晶WGM微小光共振器(断面形状球面)の異なる半径での分散 図3に断面形状が球面のMgF2共振器の分散値を示す.得られる出力光パルスの高繰り返し化を目指すために,よ図4(e)に台形の上底の幅を5 µmに固定して内角を変化させたときの分散計算結果を示す.角度を小さくしていくと(矩形に近づけていくと),異常分散へ傾いていくことが ている.直感的には,出力スペクトルの各縦モード間の位相をロックさせ,時間領域でパルスを形成させる必要がある.これは共振器内をソリトン光パルスが周回している状態を作り出すことと同義であり,この状態をソリトンコムと呼ぶ.つまり,光パルスがソリトンパルスとして周回し続けるためには異常分散が求められる. 4.高繰り返し光パルスを得るための分散設計 今回我々が作製を試みた,MgF2結晶ウィスパリングギャラリーモード(WGM)共振器における分散設計の結果を示す. り小さな微小光共振器の作製を目指した.自由スペクトル領域(FSR)が100 GHzを目指すには,半径約350 µmが必要であるが,このサイズでは1550 nm帯では正常分散となってしまう.加工に用いる短波長側ではその影響はさらに顕在化する.つまり,これではGHzを超えるような繰り返し周波数のマイクロコムは得られない. そこで,微小光共振器の断面形状を制御することで,構造分散を設計して異常分散を実現した.この研究の過程で,WGM微小光共振器の分散設計は,直線導波路モードの分散がそのまま共振器の分散となるシングルモードマイクロリング共振器の分散設計の思想とは異なることを見出した2) . 通常,構造分散は光のコアとクラッドの染み出し割合に波長依存性があることに起因すると考えられている.それはWGM微小光共振器でも例外ではないが,それに加えて,電界モードの,回転対称中心軸からの距離に波長依存性があることが大きく寄与する.図4(a)-4(d)に構造を変化させたときの電界分布を示すが,この例では台形上底の幅が狭いほど,電界強度分布の中心位置の波長依存性が大きく,それが異常分散化に大きく寄与する.この自由度も持つので,WGM共振器では分散を大きく変化できる可能性がある. わかる.電界モードの位置を詳細にみると,波長によって電界の中心位置がずれる効果が大きく寄与していることがわかる.これらの知見をまとめたのが図4(f)であり,寸法を変化させることで自由に分散を設計できることが示せた. 図4:(a-d)半径350 µmのMgF2-WGM光共振器において,高さ10 µm,20度の角度を持った台形構造の幅を変化させたときの電界モード分布.(e) 幅5 µmの台形構造の角度を変化させたときの分散.角度0度は矩形形状に対応する.(f) 上記の台形断面形状のWGM共振器の上底の幅と内角の角度をパラメータとしたときに,シングルモードかつ異常分散が得られる領域を示した概略図. 5.精密加工による共振器の作製 分散設計した構造を作製するのは容易ではない.WGM共振器で高Q値を得るためには表面を滑らかにしなくてはならないので,従来はレーザリフロ又は研磨を利用して共振器が作製されてきた.しかしこの手法では構造を任意に調整することができなので,前節で述べた精密な分散設計を行うことが難しい. 特にMgF2共振器は広帯域な波長に対して材料が透明であるという優れた特徴があり,加工に用いる短波長での利用にも適している.しかし,MgF2共振器は,これまでは研磨で作製しなくてはならず,分散設計が容易ではなかった.そこで,我々は,超精密加工技術を導入して,微小光共振器を作製する技術を開発した3). − 105 −
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