助成研究成果報告書Vol.35
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λ=1064nm, tp=20ps, E=3μJ, v=2m/s図10空間光位相変調器を用いた実験装置模式図5.空間光位相変調器を用いたガラス内部の溶融領域制御の可能性4.0MHzとパルス繰り返し数が大きくなるとせん断強度は低下していた.大きすぎるパルス繰り返し数は熱蓄積による熱的作用の増大につながることから,大きなパルス繰り返し数で強固な接合状態を実現するためには,適切なレーザパルス照射数を得るために大きなレーザ光走査速度が必要になると考えられる.走査電子顕微鏡により破断面を観察した結果を図8に示す.ここで,パルス繰り返し数0.25MHzと2.0MHzにおけるレーザパルス照射数Nはそれぞれ4.5と19である. せん断強度の低かったパルス繰り返し数が小さい0.25MHzでは破断はシリコンとガラスの境界面で生じており,破断面も比較的フラットである.一方,高いせん断強度が得られた高パルス繰り返し数の2.0MHzでは,接合部が未溶融領域も含めて剥がれている.これは,先に示した接合部の形状によるアンカー効果によって強固な接合状態が得られたと考えられる.すなわち,強固な接合継ぎ手を得るためにはシリコンとガラスが絡み合った状態が有効であり,レーザパルス照射数やパルス繰り返し数がせん断強度に大きく影響を及ぼすと考えられる.本実験において高いせん断強度が得られたレーザパルス照射数Nは20程度であった.これは,パルス繰り返し数1.0MHzではスポット直径20µm,レーザ光走査速度1.0m/sで得られる値であり,同等のスポット直径ではパルス繰り返し数4.0MHzにおいてレーザ光走査速度4.0m/sまで増大したときに同等のレーザパルス照射数20が得られる.これは8インチの単結晶シリコンウェハ全域を7分程度で処理できる速度であり,陽極接合法に匹敵するプロセス速度が期待できる.また,本レーザプロセスは事前,事後加熱等が必要なく,空間選択的な接合が容易である.開発が進むピコ秒パルスレーザのパルス繰り返し数の更なる向上とレーザ光走査速度の高速化がかみ合えば,本手法は高効率,高機能な単結晶シリコンとガラスの微細接合法として高い可能性を有することが期待できる.図8せん断試験後の破断面ガラス内部で更なるレーザ光のエネルギー吸収が実現できれば,本手法はより有用になると考えられる.そこで,空間光位相変調器を用いてガラス内部におけるエネルギー吸収点の制御を試みた.ここでは光軸方向に2点集光するように空間光位相変調器を制御してガラス内部に集光することで2つの溶融領域形成を目指した.図9にレーザ光走査方向に配置した光軸方向で異なる焦点位置となる2つの集光点をレーザ光走査方向に配置する計算機合成ホログラムCGH(Computer Generated Hologram)作成過程の概要を示す.白点を1つプロットしたパターン画像をCGHに変換してフレネルレンズホログラムを足し合わせたものを複素振幅合成した.なお,集光点の位置を調節する際は,上下の集光点の干渉を抑制するために,下側の集光点をレーザ光の走査方向に対して先行するように配置し,上側の集光点が後ろから追いかけるように配置した.このように作成したCGHを用いて空間光位相変調器を動作せることで,レーザ光軸方向の2点集光を試みた.図9光軸方向2点集光のCGH作成の概要空間光位相変調器SLM(Spatial Light Modulator)を用いたレーザ光照射実験装置を図10に模式的に示す.レーザ発振器から出力されたレーザ光をSLMに反射させ,入力したCGHによって光位相の空間分布を制御し,リレーレンズを介して対物レンズに入射してガラス試料内部に照射した.− 102 −

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