助成研究成果報告書Vol.34
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図1 ハイテン化の推移 キーワード:電磁圧接,異種金属接合,超ハイテン鋼,アルミニウム合金 1. はじめに 近年,地球温暖化防止の対策として,自動車,鉄道車両や航空機などの輸送機器の軽量化が注目されている.自動車の走行で排出されるCO2の排出量は駆動方法によらず車体の重量に比例する.従って,車体軽量化はCO2排出量削減には重点事項の一つであり,車体軽量化に対する取り組みが積極的に行われている.車体軽量化で最も積極的に取り組まれてきたのは,図1に示す予測のように,自動車部品への高張力鋼鈑(590~1490MPa)の適用である1).車体への高張力鋼鈑の適用により,衝突安全性が向上するとともに,板厚低減による軽量化も達成されている.今後も高張力鋼板を充分に使いこなした軽量化が進められていくと考えられるものの,部材の剛性を考慮すると,板厚低減にも限界がある.現行と比較して30%以上の軽量化が必要となった場合,部分的にアルミニウム合金(以下Al合金)を用いたマルチマテリアル化を視野に入れる必要がある.その場合,鋼とAl合金の異種金属接合技術が不可欠となる2). 電磁圧接は電磁力により生じる衝撃力を利用した固相接合法であり,同種または異種金属同士の強固な接合が可能である3, 4) . そこで本研究は,電磁圧接によるDP780鋼板と6061-T6板の接合について,適切な接合条件を明らかにした後に,DP980鋼板と6061-T6板の接合を行い,その接合条件を検討した.作製した試験片について引張せん断試験により接合特性を評価した.また,作製した接合板の接合界面について電子顕微鏡を用いて組織観察を行い,その界面組織形成について考察を行った. 千葉大学 工学部 総合工学科 機械工学コース (2018年度 一般研究開発助成 AF-2018012-B2) 教授 糸井 貴臣 2. 実験方法 電磁圧接による板同士の重ね接合では,コイル上に接合する固定板と可動板に間隙を設けて設置して接合を行う.コンデンサに充電した電気エネルギーは接合条件の1つであり放電エネルギーWと表記する.コイルにパルス大電流が流れると,コイル中央部の周囲には高密度磁束が発生する.この磁束が可動板に交差すると,磁束の侵入を妨げるように可動板内に渦電流が誘導される.ここで誘導された渦電流と高密度の磁束が交差して可動板内部に上向きの電磁力が発生する.電磁力を受けた可動板は高速度で変形,衝突して固定板にシーム状に接合される.導電率の高い金属ほど渦電流の電流値が大きいため,鋼板とAl合金板の接合においては,導電率の高いAl合金を可動板とする.コイルにはクロム銅製の平板状E形ワンターンコイルを用いた.コンデンサ容量は400μF,周波数は33kHzであった.供試材として可動板に6061-O板または6061-T6板を用いた.一方,固定板にはDP780鋼(JSC780Y)板またはDP980鋼(JSC980Y)板を用いた.JSC鋼はフェライト相とマルテンサイト相の2相組織であり,それぞれ引張強さが780MPaまたは980MPa級のDP鋼である.板の寸法は,Al合金板および鋼板を80×100×1.0mmとし,それぞれの板を圧延方向と垂直に電磁圧接を行った.放電エネルギーWは0.5~3.0kJとし,間隙長dを0.38~5.22mmに調整して実験を行った.図2(a)に6061-T6板とDP780鋼板の接合板(以後,接合板は6061-T6/DP780鋼接合板のように略記する.)の外観を,図2 (b)にその断面写真をそれぞれ示す.接合界面の組織観察は接合部のシーム方向に垂直の断面に対して行った.組織観察は,走査型電子顕微鏡(SEM:JSM6510)を用いた.電子線後方散乱回折(EBSD: Electron Backscatter Diffraction)法による結晶方位解析については,走査型電子顕微鏡(SEM:JSM7800)を用い,OXFORD社製のAZtecHKL EBSD解析ソフトウェアにより行った.また,SEMに付設のエネルギー分散型X線分光器(EDS:Energy Dispersive Spectrometer)により元素分析を行った.SEMで観測できる亀裂の先端をそれぞれ接合開始点,接合終了点とし,その距離を接合長さとして測定を行った.接合強度の評価は接合板をJIS13B号(1/2縮小)形状に切り出し, 引張せん断試験により行った. − 95 − 電磁圧接による超ハイテン鋼板とアルミニウム合金板 との高速接合

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