助成研究成果報告書Vol.34
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るEDS分析 図6 Mg-Li-Y-Zn合⾦の300℃圧縮材の溶質偏析部に対す図5 Mg-Li-Y-Zn合⾦の300℃圧縮材の-Mg⺟相に⽣じ さらに拡大して見ると,実際にはそこに湾曲した転位が存在す 拡張転位,つまりSuzuki効果が活性化することが明らかとなった.さらに,特筆すべき特徴として,HCP-Mg相の底面に沿った方向に加え,そこから逸れて湾曲した転位組織の発達が目立った. 図6は,上述のSuzuki偏析部に対して,EDSによるマッピング分析結果である.当該部においてZnとYの濃化を示すコントラストの発生を確認することができ,拡張転位部に対して確かにZnとYが同時に偏析している事実を裏付ける証拠となった.さらに当該偏析部に対して,EDS分析の検出対象となる元素としてMgとYとZnの3元素を指定して定量解析を行ったところ,当該母合金の仕込み組成においてY/Znの原子分率比が2であったのに対し,Suzuki偏析で生じた偏析物の原子分率比は大幅に変化して0.5以下になることがわかった(Mg-1.35at.%Y-2.94at.%Zn).以上の結果によれば,Liを添加したMg-Y-Zn系合金においてもLi無添加合金と同様の高温塑性挙動,つまり,Suzuki効果が活性化し,高温強度に影響を及ぼす可能性があることが明らかとなった. →次にLi添加の有無による変形組織の違いを見極めるため,両合金の転位下部組織に対して詳細なSTEM観察を実施した結果を図7に示す.図(a), (b)がLi無添加合金の300℃圧縮材から得られたSTEM像で,(c), (d)がLi添加合金の結果である.これら2組の写真を注意深く見比べると,それぞれの転位下部組織が有する特徴として,次の2点において違いが認められた.第一点目は,拡張転位の直進性である.つまり,Li無添加合金にみられる転位の大半が-Mg母相の底面内で生成した拡張転位とみられ,しかも拡張幅が100 nmを超える長いものが珍しくない.これに対して,Li添加合金に形成された転位組織は比較的短いものが多いことに加え,底面から外れて湾曲するものの存在が目立つことがわかった.これらを るわけではなくて,非常に短い拡張転位が底面から外れた方向に数珠状に連なって存在する様子が明らかとなった.このように短い拡張転位が縦列した配置を取ることで,これに隣接する左右の結晶領域のc軸にずれが生じ,c軸方向に生じたひずみを緩和するのに有効に機能し,ひいては延性の向上につながったと解釈された. Li無添加ならびにLi添加合金の高温変形で生じた転位の性格を評価するため,積層欠陥を含む局所領域に対して高分解能TEM観察を行った.図8はLi無添加合金の300℃圧縮材に生じた典型的な積層欠陥を捉えた高分解能TEM像である.黄色い垂直記号で挟まれた場所に拡張幅20 nm前後の積層欠陥が存在するとみられ,左右それぞれの端部に対して完全結晶を想定した閉回路を適用して原子位置の変位ベクトル,つまりバーガースベクトルb を評価した結果,それぞれの領域に正と負の向きのショックレー型の部分転位が存在することがわかった.この例が示すように,Li無添加合金に生成した拡張転位の多くが,底面すべりの分解によって生じたショックレー型の部分転位と判断された.同様な特徴をもつ拡張転位が,Li添加合金の圧縮材においても多数観察された.一方,図9はLi添加合金の300℃圧縮材に生じた典型的な拡張転位を捉えた高分解能TEM像である.黄色い矢印が示す場所に積層欠陥が存在し,それぞれの端部を取り囲む領域に対して完全結晶を想定した閉回路を適用してバーガースベクトルを評価した結果,互いに逆向きのa+c成分の原子変位を伴った部分転位が存在することが明らかになった.このようにして,この領域には錘面転位の分解によって生じた部分転位が形成されていることが分かった.この観察結果が例示するように,Li添加合金の変形においては錘面すべりが た転位組織を捉えたTEM/STEM像 − 93 −

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